スミヨンよぎった「凱旋門賞のオルフェ」 内ラチ一気差しでライラック女王奪還

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「自分がこれまで乗ってきた馬の中でベストの1頭」

ゲストプレゼンターの山本舞香さんとニッコリの記念撮影 【スポーツナビ】

 オルフェーヴルとの4度のコンビでつかんだ勝利は、結局のところ同じGIIレースを2勝でしかない。それにも関わらずオルフェーヴルは、スミヨンの中でひと際特別な存在として、今も強烈な思い出とともに残っているという。

「最初の凱旋門賞のあと、海外の人たちでさえ誰もが口にしていたのは勝ったソレミアではなく、2着のオルフェーヴルのことでした。自分にとっては事件のような、悪夢のようなレースだったのですが、それでもオルフェーヴルは自分がこれまで乗ってきた馬の中でベストの1頭に入る馬です」

 その強さだけではなく、世界屈指の名手でさえ御しきれなかったほどの強烈なキャラクター。だからこそ、その娘ラッキーライラックの落ち着きぶり、メンタルの強さには驚いているとも、スミヨンは話す。

「調教の時からおとなしくて、すごくビックリしましたね。オルフェーヴルは自分のような暴れん坊ですが(笑)、ラッキーライラックは落ち着いていてレベルが高い。まるで性格は違いますが、能力の高さはしっかり受け継がれている。オルフェーヴルは種牡馬としても、こうしたメンタルの強い馬が生まれてくる証明にもなったと思います」

「ベストコンディション」のスミヨン、次週以降も要注目

 オルフェーヴルの思い出とともに、ラッキーライラックもきっと忘れられない1頭になるに違いない。そして、エピファネイアで制した14年ジャパンカップ以来5年ぶりのJRA・GI勝利を飾ったスミヨンは、さらに思い出の日本馬を量産していきそうな雰囲気に満ち溢れている。

「以前は体重が落ちなくてベストの状態で騎乗できませんでしたが、年齢を重ねて、色々なトレーニングを積んでベストコンディションで日本に来ました。来週のダイアトニック(マイルCS)もチャンスがあると思いますし、JCのシュヴァルグランもこれから状態を確かめていきたい。もちろん、サートゥルナーリアも有馬記念はいい状態で来てくれると思っています。残りのGIもベストを尽くしていきたい」

 昨秋のGIシリーズは外国人ジョッキーが猛威を振るったが、今年はスミヨンが旋風の先頭に立つことになるか。

復活とともに距離の幅も広がったラッキーライラックの次なる目標はどこになるだろうか 【スポーツナビ】

 一方、ラッキーライラックとしてもここを単なる復活の1勝とするのではなく、2度目の全盛期を迎えるきっかけとしたい。

「久しぶりの勝利となりましたが、毎回一生懸命走ってくれる馬。噛み合えばもっと走ってくれると思いますし、これまでマイルでばかり勝っていましたが、それだけの馬ではないと思っていました。今回の勝利で幅が広がりましたし、さらに期待したいですね」と松永幹調教師。次走については馬の状態を見つつ、オーナーサイドと相談してからとのことで、アーモンドアイは別格の感があるが、リスグラシューとの初対決、ディアドラとの再戦の時がぜひとも来てほしいものだ。

最終レース後の即席サイン会も大盛況

最終レース終了後にはウイナーズサークルで即席サイン会となった 【スポーツナビ】

 ちなみに……自分から「オルフェーヴルのような暴れん坊」と言ってしまうスミヨン騎手ですが、ファンにはとても紳士で気さくな人です。今日も表彰式後にウイナーズサークルで即席サイン会が行われましたし、さらにすごかったのは最終レース終了後。「さっき十分にできなかったから、また後で行っていい?」と、再びウイナーズサークルに降臨。12レースを勝った幸騎手、さらには常石元騎手まで参戦して大盛り上がりとなっていました。スミヨン騎手の前にはマーフィー騎手もサインしてくれていたみたいなので、競馬ファンの皆さん、馬券で負けてカッとなっても、最後まで残っていたらいいことあるかもしれませんよ。(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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