スミヨンよぎった「凱旋門賞のオルフェ」
内ラチ一気差しでライラック女王奪還

阪神JF以来、復活のGI・2勝目

エリザベス女王杯はスミヨン騎乗のラッキーライラックが勝利!
エリザベス女王杯はスミヨン騎乗のラッキーライラックが勝利!【スポーツナビ】

 第44回GIエリザベス女王杯が10日、京都競馬場2200メートル芝で行われ、クリストフ・スミヨン騎乗の3番人気ラッキーライラック(牝4=栗東・松永幹厩舎、父オルフェーヴル)が優勝。中団待機から最後の直線で最内を鋭く突き抜け、阪神ジュベナイルフィリーズ以来のGI・2勝目を手にした。良馬場の勝ちタイムは2分14秒1。


 ラッキーライラックは今回の勝利でJRA通算12戦5勝、重賞は2017年GI阪神JF、同GIIIアルテミスステークス、18年GIIチューリップ賞に続く4勝目。スミヨン、同馬を管理する松永幹夫調教師ともにエリザベス女王杯はうれしい初勝利となった。

松永幹夫調教師(右から2人目)は史上初の騎手、調教師としてエリザベス女王杯勝利となった
松永幹夫調教師(右から2人目)は史上初の騎手、調教師としてエリザベス女王杯勝利となった【スポーツナビ】

 なお、1馬身1/4差で藤岡佑介騎乗の7番人気クロコスミア(牝6=栗東・西浦厩舎)が3年連続の2着。さらにクビ差の3着には1番人気に支持されていたミルコ・デムーロ騎乗のラヴズオンリーユーが入った。

ファレノプシスと同じ馬番「2」

 アーモンドアイ、リスグラシュー、ディアドラの国際GIタイトルを持つ牝馬3巨頭が不在。それだけに“女王杯”と謳(うた)うにはやや物足りなさの残るメンバーだったかもしれない。しかし、だからこそ若い3歳牝馬の台頭を簡単には許さない――そんな古馬の意地がそこにはあり、これまでくすぶり続けていた火が一気に炎となる――そんな燃え上がるようなラッキーライラックの走りでもあった。


「やっと勝てましたね。ここまで長かったです。力のある馬だというのは分かっているのですが、なかなか結果が出なかったので、ここで勝つことができて本当にうれしいですね」


 安堵の表情とともに現役時代と変わらぬミッキースマイルで答えたのは松永幹調教師だ。騎手時代にも2000年ファレノプシスでエリザベス女王杯を制し、騎手・調教師の両方で同レースを勝つのは史上初の快挙。そのことについてあまり意識はしていなかったというが、馬番「2」は奇しくもファレノプシスと同じだった。

馬番「2」は松永幹夫調教師にとっても思い出深い“吉兆”だった
馬番「2」は松永幹夫調教師にとっても思い出深い“吉兆”だった【スポーツナビ】

「枠順を見たときに『ああ、いい枠だな』と思いましたね。ファレノプシスの時がよみがえったというか、思い出させてくれましたし、今回のレースに対していいイメージしかわかなかったですからね」


 その吉兆を現実とさせた立役者の一人が、世界の名手・スミヨン。調教から手綱をとり、その際に感じたラッキーライラックの印象は「まず落ち着いている馬。その割に動きがスムーズで機敏」。こういった特徴を持つ馬は、これまでの経験則からスミヨンにとって“走る馬”のサインであり、ジョッキーもまたトレーナー同様に良い予感をレース前から感じ取っていたに違いない。

最後の直線、内ラチ沿いで思い出した1頭の名馬

最内から一気に前を行くクロコスミア(右)をとらえた
最内から一気に前を行くクロコスミア(右)をとらえた【スポーツナビ】

 レースはスタートこそ好発とはいかず「思ったより後ろの位置になってしまった」とスミヨン。しかし、「前走(1800mの府中牝馬S)よりも距離が長いし、慌てて押して行っても仕方ない」と、すぐさま戦略を切り替えて出たなりのポジションを選択。ちょうど目の前には人気の一角・秋華賞馬クロノジェネシスがいたこともあり、これを目標に進めて迎えた最終4コーナー。スミヨンには2つの選択肢があった。


「3コーナーを下った後、最初は外を回ろうかとも思ったんですが、右を見たらちょうど内ラチ沿いが開いていた。幸運でしたね。もちろん、ラッキーライラックの切れる脚があったからこそであり、そうじゃなかったから勝てなかったと思います」


 鞍上の瞬時の判断と相棒の瞬発力。これまでの惜敗続きが嘘のような伸び脚で一気に先頭に立ち、鮮やかにゴール板を駆け抜けていった。実はこの時、スミヨンはある1頭の馬のことを思い出したという。それは、日本の競馬史に大きな足跡を残した名馬であり、ラッキーライラックの父でもあるオルフェーヴルだった。

ラッキーライラックの背中でスミヨンが思い出したのは凱旋門賞をともに戦ったオルフェーヴル
ラッキーライラックの背中でスミヨンが思い出したのは凱旋門賞をともに戦ったオルフェーヴル【スポーツナビ】

 オルフェーヴルとスミヨンと言えば、2012年、13年と2年連続で凱旋門賞に挑戦し、ともに2着だったコンビ。特に初挑戦となった2012年はもう目の前まで歴史的勝利が迫っていたにも関わらず、ゴール寸前で内ラチに向けて斜行してしまい、地元フランスの伏兵馬ソレミアに足元をすくわれてしまった。


「今日のエリザベス女王杯の一番のポイントは、最後は内ラチ沿いを走ったので、オルフェーヴルが凱旋門賞で内ラチにぶつかったことを思い出してしまいました」

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