強すぎアーモンドアイはもはや畏敬の対象 天皇賞圧勝も調教師「まだ“上”がある」
最内の1頭分スペースを悠々と突き抜ける
空いた1頭分のスペースに瞬時に入り込み、あっという間に後続を置き去り 【写真:中原義史】
「最後の直線は(前が開くかどうか)ちょっとだけ心配でしたけど、最内にスペースができたので、すぐに入っていきました。すごくいい脚を使ってくれましたね」
ルメールはごく簡単そうに言っているが、アエロリットと内ラチの間にできたスペースはわずか1頭分。スッと入り込める瞬発力がなければそこを突くのは到底無理だろうし、またその度胸や人馬の信頼感がなくてはとてもできない芸当。しかし、それを当たり前のようにやってしまうのだから、これだけでもアーモンドアイ&ルメールの最強コンビぶりが見て取れるというもの。そして、圧巻の走りはここからがクライマックスだった。最内のスペースに入り込むや、並み居るGIホースたちを瞬く間に置き去り。熾烈な2着争いと対照的な走りは、まるで別世界の競馬を見ているようだった。
「おっかない」「我々が思っている“上”を常に行ってくれる馬」
「まだ“上”があるような、そんな感じがします」と国枝調教師(左)もアーモンドアイの限界は計り知れない様子だ 【写真:中原義史】
「やっぱりすごいなと思いましたし、私自身が驚いています。特に直線はビックリですよね。何かおっかないというか(笑)、すごいなと」
これまでに国枝調教師はアーモンドアイと同じ三冠牝馬アパパネに、有馬記念馬マツリダゴッホ、マイル&千二覇者のブラックホークなど、数多くのGI馬を世に送り出している。その名トレーナーをして「我々が思っている“上”を常に行ってくれる馬。そして、まだ“上”があるような、そんな感じがしますね」と、前述の「おっかない」という表現を含めてどこか畏敬の念を抱かせる、アーモンドアイとはそんな存在となりつつあるのだろう。
そんなことを考えていたら、「今日もアーモンドアイは目がクリっとして可愛いなぁ」なんてパドックで思っていた自分が急に恥ずかしくなった。目の前で見たその可愛い牝馬は日本どころか、世界の競馬史に名を刻む歴史的名牝だと、今さらながら改めて襟を正した次第だ。
次はJCか、それとも香港か
次走は連覇を目指してJCか、それとも再び海外制覇を狙う香港か 【写真:中原義史】
「もう特別な馬。彼女のポテンシャルは本当に珍しい」とルメールが言えば、「追い切りの時点では8割ぐらいの出来で、レース直前にもう1つ上がってくれたと思う。これ以上の状態を求めるのもどうかと思いますが、また別の面を見せてくれるのではとも思います」と国枝調教師。よほどの外国馬が来日してくれない限りは、JCでこの天皇賞・秋以上のメンバーは望めないだけに、僕個人としては香港に参戦して再び世界のホースマンの度肝を抜いてほしいのだが、競馬ファンの皆さんの考えはいかがでしょうか?(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)