連載:0.0%に挑んだ八村塁とそれを支えた人たち

八村塁、鮮烈NBAデビューで何を感じたか ドキュメント 歴史的な1週間に迫る

丹羽政善
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30ドルのチケットで歴史的瞬間に立ち会い

八村塁がついにNBAデビュー。開幕戦のコートに立ち、14得点10リバウンドの「ダブルダブル」をマークした 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 開幕戦当日の23日(現地時間、以下同)、午前のシュートアラウンド。練習を終えた八村塁がコートの外で取材を受けていると、髪の毛を金色に染め、コーンロウに編み込んだチームメートのアイザイア・トーマスが、キックス(シューズ)を手に少し離れたところから声を張り上げた。

「ルイ! これも映してくれ。で、インスタグラムに載っけてくれ」

 今や八村は立派なインフルエンサー。彼のインスタにシューズの写真が載れば、それが売れて、自分に売り上げのインセンティブが手に入る――という計算か。もちろん冗談だが、こうして和ませてくれる存在がいるのは大きい。

「朝起きて、不思議な気持ちだった」と八村。夢の結実がそこに迫り、「興奮していた」。

 さすがに普段の朝とは違ったようだ。

 それからおよそ7時間後の午後7時35分、試合前の選手紹介で「RUI HACHIMURA」とコールされると、八村は憧れてきたNBAの舞台に、ついに立った。

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 その歴史は「セクション101、S列、18番」で見届けた。

 ゴール裏の1階席。取材パスの申請が殺到し、「もう、試合用の取材パスが出せない」と言われ、チケットを買った。

 午前の練習が終わってからインターネットでチケットを探していると、マーベリックスのチケットは売り切れが続いているはずなのに、選択肢は少なくない。高いチケットは200ドル(約2万2000円)を超えるが、2階席の上の方なら20ドル(約2200円)前後。ゴール裏で77ドル(約8400円)だったが、税金や手数料を加えると90ドル(約9800円)を超える。どこにしようかと迷っていると、同じくチケット取材をしようとしていた旧知の記者が、チケット売り場から情報をくれた。

 午後5時半(試合開始2時間前)から、売れ残ったチケットを売り出す。77ドルの席なら税込みで30ドル(約3300円)。それをわざわざチケット窓口の人が教えてくれたというから、ありがたい。

 結局、近くで時間をつぶし、午後5時前に指定された場所へ行くと、すでに10人ぐらい列を作っていた。初めてのことなので、それが多いのか少ないのか、皆目検討がつかなかったが、5時半過ぎ、無事にゴール裏の席が30ドルで買えた。すぐ後ろに並んでいた前出の記者は、「ゴール裏は売り切れ」と言われたらしいが、さらにコートに近い――しかも、ウィザーズのベンチに対面する位置の席をやはり30ドルで手に入れた。マーベリックスのチケットシステムは不思議である。

 ちなみに、この日もチケットは売り切れ。後で調べると、ホームゲームは2001年12月15試合から721試合連続ソールドアウトとなり、目下、NBAでは最長記録だろう。

 なるほど、記録はこうして作られる。
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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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