連載:0.0%に挑んだ八村塁とそれを支えた人たち

ゴンザガ大コーチが魅せられた八村塁 苦労の果てに飛躍した理由

丹羽政善
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先の開幕戦で「ダブルダブル」をマークした八村に、ゴンザガ大のロイドコーチは頬を緩めた 【Getty Images】

「今後、塁の試合を見るのが、ますます楽しいものとなりそうだ」

 開幕戦から一夜明けた24日(現地時間)、ゴンザガ大のトミー・ロイドアシスタントコーチから連絡があった。試合を生中継で見ることはできなかったそうだが、教え子の八村塁(ウィザーズ)がNBAのデビュー戦で14得点10リバウンドの「ダブルダブル」をマーク。ハイライト映像を見ながら、頬を緩めた。

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初対面から成功を確信

 オフになると、スカウティングで世界中へ出かけていくロイドは、海外のバスケ事情に精通し、各国のコーチらとつながりが深い。レイカーズ、ウォリアーズなどで活躍(2006〜15年)したフランス出身のロニー・トゥリアフは彼がリクルーティングしたひとりで、カナダ人のケリー・オリニク(ヒート)も、彼が熱心に誘った。

 そんな彼が初めて八村を見たのは「2014年にドバイで行われたU-17FIBA選手権のハイライトを見ているとき」だったという。何の予備知識もなかったが、「この選手は……」とメモに“RUI HACHIMURA”と走り書きした。

「オフェンスだけがすごいとか、ディフェンスだけがすごいとか、そういう偏った選手ではなく、総合力に優れた選手だった。そして、ひとつひとつのプレーのレベルの高さが画面を通してはっきり伝わってきた」

 ロイドは、さっそく仙台へ飛ぶ。直接、八村を見るためだ。

「初対面のあのとき、あいさつをしながら冗談っぽく、『もしゴンザガ大の奨学金が欲しいなら、今日、それにふさわしいプレーを見せてくれ』と言ったんだ。そしたら、期待以上というか、こちらの想像をはるかに超えるプレーを見せてくれた(笑)。そのときから今を疑わなかったよ」

 そうした経緯を経て正式にリクルーティングが始まったわけだが、改めて当時のことを「八村の中に、プレー以上に魅せられたものがあった」と振り返る。
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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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