原辰徳は鬼にも庇護者にもなる 短期決戦で勝負の明暗を分ける監督の手腕

鷲田康
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勝負の明暗を分ける監督力

腰痛でエース・菅野が離脱中。原監督の手腕が日本シリーズ進出へ、大きなカギを握りそうだ 【写真は共同】

 力が拮抗(きっこう)した短期決戦ではベンチワークが戦いのカギを握る。

 それはセ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで、改めて浮き彫りとなった事実だった。
 オーソドックスに選手の力に頼るチームは、ポストシーズンではなかなか活路を開けないし、動き過ぎてもまた墓穴を掘る。そのことは横浜DeNAと阪神の戦いでも勝負の明暗を分けてきた大きな要因となったわけである。

 その監督力という点で、9日から始まるCSファイナルステージで注目されるのは、ペナントレースでチームを5年ぶりのリーグ優勝へと導いてきた巨人・原辰徳監督の手腕ではないだろうか。

「われわれのファーストミッションは勝つこと。勝つために監督とは、ときには鬼にもならなければならない」

印象に残る2013年CSファイナル・広島戦での采配

 こう語る原監督の短期決戦の采配で強く印象に残っているものがある。
 それは第2次監督時代の2013年、広島を相手にしたCSファイナルステージでのものだった。
 第1戦の4回のことだった。
 1対2と1点を追いかける展開の中で2死満塁のチャンスをつかむと、原監督は先発のエース・内海哲也投手に替えて代打に石井義人内野手を送る決断をした。

 この年の内海は6月にプロ通算100勝を達成し、3年連続の最多勝は逃したものの、それでも4年連続の2桁勝利となる13勝をマークしている。まだまだ押しも押されもしない巨人の大エースとして君臨していた頃の話である。

 その大エースを4回という早い回で引っ込めて代打を送った。

「目先の1点のために、ここだけではない、日本シリーズまで含めたポストシーズンの柱となるエースのプライドを傷つける采配ではないか」――そんな批判が飛び交う決断だった。

 ただ、この決断の裏には原監督ならではの勝負に対する深い洞察が秘められていたのだ。
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著者プロフィール

1957年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。91年オフから巨人キャップとして93年の長嶋監督復帰、松井秀喜の入団などを取材。2003年に独立。日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、雑誌、新聞で活躍。著書に『ホームラン術』『松井秀喜の言葉』『10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦』『長嶋茂雄 最後の日。1974.10.14』などがある。

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