バイエルンとて育成は一日にしてならず ブンデスリーガ探訪記(2)
800億円以上を投資した育成施設
2017年に設立されたアカデミー施設「FCバイエルン・キャンプ」。2500人収容のスタジアムも備える 【スポーツナビ】
こう笑いながら話すのは、バイエルン広報部のディルク・ホイド氏である。久保建英(マジョルカ)の名前が話題に挙がった際の言葉だ。
ブンデスリーガ・メディアツアーの2日目(現地時間5日)、向かったのはバイエルンユース・アカデミーの施設「FCバイエルン・キャンパス」。設立は2017年8月。30ヘクタールの敷地内には2500人収容可能なスタジアムをはじめ、グラウンド7面、フィットネス施設、選手寮などを完備した、最新鋭の育成施設である。バイエルンは7億ユーロ(約822億円)を投じて選手育成の拠点を刷新した。
前日の「ブンデスリーガ・ワークショップ」で、ブンデスリーガ全体で育成に力を入れ、2002年以降アカデミーへの投資は16億ユーロ(約1900億円)に上るという報告があった。その具体的なケースのひとつが、バイエルン・キャンパスというわけだ。ここではU-9からU-19までのユース10チーム、女子4チームが活動し、将来のバイエルンを背負う選手を育てるべく、多くのコーチ、スタッフが指導にあたっている。ちなみに、元ドイツ代表FWのミロスラフ・クローゼは現在U-17チームの監督を務めている。
現在アカデミー出身で活躍するのは…
00年にダビド・アラバが昇格して以降、アカデミー出身者でトップチームで活躍する選手はいない…… 【Getty Images】
「アカデミー出身者で、現在トップチームで活躍しているのはDFダビド・アラバだけ。9年前のことです。少ないですよね。それには2つの理由があります。ひとつは、トップチームでは世界レベルの才能がなければプレーできないこと。それくらいの選手を私たちは求めているからです。もうひとつは、近年育成に力を入れているクラブが増えており、ホッフェンハイム、ライプツィヒなどが最新のトレーニング施設、方法で成功を収めています。育成に関して、バイエルンはトップではなかったのです」
かつてバイエルンユースはフィリップ・ラーム(引退)、バスティアン・シュバインシュタイガー(シカゴ・ファイアー)、トーマス・ミュラー、トニ・クロース(レアル・マドリー)ら、バイエルンのみならず、ドイツ代表でも一時代を築くトッププレーヤーを輩出した実績がある。それだけに近年はどうしても物足りなく映る。ぜいたくな話ではあるが。