バイエルンとて育成は一日にしてならず ブンデスリーガ探訪記(2)

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ダイヤの原石をいかに見つけるか

韓国人FWチョン・ウヨンは18歳でバイエルンユースに加入。トップチームでデビューを飾った後、今夏フライブルクに移籍した 【Getty Images】

 バイエルンがあらためて育成に注力し、豊富な資金をもとに立派な施設をつくり上げたことは分かった。だが、それだけでは成功は約束されない。トップ選手を育てるには、まずはダイヤモンドの原石を見つけることから始めなければならないのだ。ホイド氏もその重要性を理解している。

「ドイツ国内においてはシステムが構築されており、組織的に選手を見ている、と言えるでしょう。スカウトの数は国内に25〜30人いて、近隣諸国にも派遣しています。世界中に派遣することは難しいので、独自のネットワークも重視しています。例えば、韓国人FWチョン・ウヨン(18歳でバイエルンユースに加入。今夏フライブルクに移籍)は口コミから情報が入ってきました。アカデミーの責任者であるヨハン・ザウアーに信頼する筋から情報があり、話が早く進んだ案件でした。

 本当に才能のある、良い選手は世界が放っておきません。バイエルンだけでなく、バルセロナ、レアル・マドリーなどいろいろなクラブが絶対に見つけます。埋もれてしまうことはないでしょう。バイエルンもタケフサ・クボについて知っていました」

 ここで冒頭のコメントにつながるわけだが、冗談だとしても、現状をよく表しているのではないだろうか。欧州ビッグクラブのスカウト合戦は年々激しくなっている。世界はより若く、将来性のある選手を探している。久保、中井卓大(レアル・マドリー下部組織)に続いて、日本の新たな才能がバイエルン、あるいは他のクラブで磨かれる日が来るかもしれない。

バイエルンはホームで今季初黒星

CLの疲れからかバイエルンの選手の動きは低調。2失点を許し、今季ホーム初黒星を喫した 【Getty Images】

 バイエルン・キャンパスの視察後は、アリアンツ・アレナに移動して、バイエルンvs.ホッフェンハイムを観戦。スタジアムは最上階までびっしりと埋め尽くされ、ファン・サポーターの熱気が極上の雰囲気を演出する。「本場」とはこういうことか、と圧倒された。

 試合は序盤バイエルンが押し込むもスコアレスで折り返すと、一瞬の隙を突いたホッフェンハイムが先制。その後、ロベルト・レバンドフスキのゴールで追いついたが、終盤にホッフェンハイムが勝ち越しに成功し、バイエルンは今季ホーム初黒星を喫することになった。

 ここまで2日にわたってブンデスリーガ、正確に言えばバイエルンの偉大さを聞かされてきただけに、自然とバイエルンに肩入れするようになっていた。この試合も勝手にバイエルンが勝つものと思い込んでいたのだが、サッカーはそれほど甘くない。いやむしろ、だからこそ、サッカーは面白いのだ。

 ドイツの巨人バイエルンであっても、勝負に絶対はない。4日前チャンピオンズリーグ(CL)で昨季準Vのトッテナムに大勝したかと思えば、国内リーグで格下のホッフェンハイムに負けることもある。それもホームで。そしてまた、明日の勝利に向けて選手、クラブ関係者はそれぞれの持ち場で精進していく。トップも育成も同じだ。その日々が尊い。

 明日は早朝からミュンヘンに別れを告げ、フランクフルトへ移動する。

(取材・文:今成裕/スポーツナビ)

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