社会人ドラフト候補、2019年の注目株は? 高卒3年目のエースに逸材集まる

楊順行

JFE西日本の左腕・河野は「1位候補」

「ドラフト1位候補の12人」に名を連ねそうなJFE西日本・河野。小柄ながら、左腕から繰り出す150キロ台の直球が魅力だ 【写真は共同】

 たとえば瀬戸内高から東京ガスでの3年を経てプロ入りした山岡泰輔は、いまやオリックスのエース格。高卒から社会人を経由した投手が、プロでも即戦力として通用するケースは多い。そして今年の社会人は、プロの指名が解禁となる高卒3年目のエースが豊作だ。

 筆頭は、JFE西日本の河野竜生だろう。

 鳴門高では1年夏から甲子園のマウンドを踏み、社会人でも1年目から補強されて都市対抗に出場。圧巻は、昨年の日本選手権だ。2年目ながらエースとして初戦、準々決勝で先発した河野は、いずれも9回を完封。三菱重工名古屋との決勝こそ、チームは延長で敗れたが、河野自身は9回で降板するまで1失点、つまり大会27イニングをわずか1失点で準優勝という完璧な投球を見せたのだ。

 小柄な左腕ながら、ストレートは150キロ超。ただ、持ち味は緩急を使って制球よく投げ分ける投球術だ。また「生意気だけど、気持ちのあるヤツ」と山下敬之監督が評するマウンド度胸もいい。自チームとしては初めてだった今年の都市対抗では、右ヒザの不調が噂されたが、先発した初戦を悪いなりに勝ちに導くのはさすが。9月10日、阪神二軍との交流戦では4回を3安打無失点。「子どものころからの夢」と言う河野に対し、プロ球団のスカウトたちも、「1位候補の12人のひとり」とうなったらしい。

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東海理化・立野は揺らぐ心境?

「立野がいいんですよ……」

 この春先。社会人チームのキャンプ回りをしていると、とくに東海地区の監督から、しきりにそういう声が聞こえてきた。

 立野和明。東海理化のエースである。

 愛知・中部大一高では無名だったが、社会人でめきめき力をつけた。スピンの効いた150キロ台のストレートを軸に、1年目から公式戦に登板。「素材がいいことは間違いない」とプロのスカウトも太鼓判を押す。2年目の昨年はアジア・ウインター・ベースボールにも招集され、日韓台湾の若手プロを相手に苦しんだが、韓国戦では自己最速の151キロを投げ込み、きっちりと抑えてみせた。「立野がいい」と、ライバルチームを警戒させるのに十分な内容。今季、チームは都市対抗出場を逃したが、立野はトヨタ自動車に補強されて2試合に先発し、準優勝に貢献している。

 この9月、日本選手権の東海地区予選ではヤマハに5回途中4失点で降板。敗者復活トーナメントで東邦ガスに2失点完投勝利したものの、チームは結局、日本選手権出場を逃した。立野本人は「プロに行きたい気持ちはありますが、結果が出ていないので見つめ直したい」。高卒3年目の心境は、微妙に揺らいでいるようだ。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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