ラグビーW杯2019特集

リーチ マイケル、日本ラグビーに生きる
「愛されるチームになるため小さな努力を」

日本刀のような切れ味だったリーチの走り

2大会連続で日本代表主将としてワールドカップに挑むリーチ マイケル
2大会連続で日本代表主将としてワールドカップに挑むリーチ マイケル【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 9月20日に開幕するラグビーワールドカップまであと1週間となった。「ワンチーム(ONE TEAM)」をスローガンに掲げるラグビー日本代表で、チームの精神的支柱として引っ張るのは、なんと言っても主将のFLリーチ マイケルである。


 大会が近づくにつれて、リーチはターゲットをベスト8、ベスト4、そして優勝と徐々に上げていった。最近は「パシフィックネーションズ・カップ(PNC)も優勝を狙っていませんでした。目の前の試合を一試合ずつ戦っていきたい。一番大事な試合は開幕のロシア代表戦です。先を見ない方が今のチームに合っている」と語気を強める。


 昨年11月、ラグビーの聖地「トゥイッケナム」で善戦したイングランド代表戦、そして逆転勝ちしたロシア代表戦。日本代表では両サイドに張っているバックス、バックローの選手たちを合わせて「サムライ」と呼んでいるが、欧州遠征でのリーチのランは、まさしく日本刀のような切れ味だった。


 3勝を挙げた前回大会も主将だったリーチについていけば、2019年、大きなプレッシャーの中で迎える自国開催のワールドカップでも、日本代表とファンに大きな歓喜をもたらすのでは、と大きな期待を感じた遠征だった。

「世界のどのチームよりも準備期間が長い」

恥骨炎の影響で春は別メニュー調整が続いた
恥骨炎の影響で春は別メニュー調整が続いた【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 そして今年、サンウルブズに加わっている選手や昨年の試合出場時間が少なかった選手以外は、2月から始動した。「世界のどのチームよりも準備期間が長い。言い訳はできない」と、リーチも基本練習に精を出していた。


 しかし3月、真面目で責任感のあるリーチの性格があだになったのだろうか、恥骨を痛めて別メニューとなってしまう。恥骨炎は「グロインペイン」と呼ばれ、サッカー日本代表の中山雅史氏、長谷部誠も苦しんだ、治りにくい病気である。


 当初リーチは5月、特別編成チーム「ウルフパック」のオーストラリア遠征で復帰する予定だったが、長時間のフライトの影響で悪化し、ニュージーランドで治療を受けた。6月の宮崎合宿も途中までは別メニューだったが、どうにか7月のPNCのフィジー戦で本格復帰を果たしたというわけだ。


 リーチが練習や試合に参加できない間、チームにとって良かった点もあった。それはFLピーター・ラブスカフニ、FL/No.8姫野和樹、SH流大といったリーダーグループ9人のリーダーシップが育まれたことだ。現在では、さほどリーチが声をかけなくても、他のリーダーたちが率先してチームを引っ張るような状況になっている。リーチは「自分が声をかけなくても良くなってきて、自分の中でも少し甘えていたこともあった。これからは、キャプテンとして身体でチームを引っ張っていきたい」と逆に引き締めていた。

「知ることでより日本が好きになる」

多様なバックグラウンドを持つ選手たちをまとめている
多様なバックグラウンドを持つ選手たちをまとめている【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 また現在、外国出身者が15人と増えたチームに対して、ニュージーランド出身で、日本の文化もよく知るリーチは、外国人選手たちに「君が代」を教えたり、宮崎合宿では歌詞に出てくる「さざれ石」を見学したりと日本文化を深く知る行動をしている。また、シナリ・ラトゥ(現・ラトゥ ウィリアム志南利)ら外国出身で日本代表としてプレーした選手たちを知ってもらうスピーチも行った。


「ラトゥさんがいなかったら、今の僕はいない。また現在の日本代表はダイバーシティーがあり、いろいろな国の人がいます。もっと日本を知ってもらわないといけない。日本は1000年以上の歴史を持っている。たくさん、いい感じの文化も持っている。知ることでより日本が好きになるし、もっと頑張らないといけないと思うようになります」(リーチ)

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

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