リーチ マイケル、日本ラグビーに生きる 「愛されるチームになるため小さな努力を」

斉藤健仁

“ウォーリー”から“ゴリラ”

フィジーでは家族でリラックスした時間を過ごした 【斉藤健仁】

 そんなリーチは、ワールドカップ期間中の10月7日に31歳になる。15歳で札幌山の手高に留学したときは体重が70キロ代と細く、たまたま赤白のシャツを着ていたため「ウォーリー」と呼ばれたほどだった。現在は試合を観戦した母親のイヴァさんに「ゴリラみたいだったわ!」と言われるほど、体重110キロを超える強靱な肉体を持つようになった。

 東海大の同級生だった日本人の知美さんと結婚し、日本国籍を取得したリーチは、ジェイミー・ジョセフHCに「ほとんど日本人のようなところがある」と言われるほどだ。「ちょうど今年でニュージーランド15年、日本に来て15年の分岐点。その経験を(チームメイトに)伝えることと、(子どもたちに)新しく経験させることが大事」と考えるようになった。

モンゴルからの留学を支援「アジアのラグビーも強くしたい」

日本だけでなく、アジアのラグビーが強くなることを願っている 【斉藤健仁】

 4月、短いオフの間にリーチはモンゴルに飛んだ。知美さんは前日に突然、「モンゴルに言ってくる」と言われたという。

 リーチは来年から自費で、モンゴル人の高校生を札幌山の手高にラグビー留学させることを考えており、そのための訪問だったというわけだ。かつては、フィジー人の従兄弟(元東芝WTBエペリ・ナコリニバル)を留学させたことがあったが、今回はラグビーがほとんど普及していないモンゴルの地を選んだ。もちろん母校の佐藤幹夫監督の許可を得ての行動だった。

「相撲を見て、モンゴル人は格闘心、ハングリー精神が強いと思った。トンガから留学生はたくさん来ているが、モンゴルもいいなと。アジアのラグビーも強くしたい。モンゴルはフィジーの暮らしの寒いバージョン。何かきっかけを作れば、その人や家族にいい影響を与えることができる。サポートしたいと思いました」(リーチ)

 来年4月から1人、札幌山の手高に入学し、ラグビー部に入る予定だという。「相撲はパイプがあるが、ラグビーは今までなかった。モンゴルの人に聞いたら、モンゴル人はあまりチームスポーツに向いていないと言っていたが、どう変えていくか。ひとり、面白い子がいました。(佐藤)先生も楽しみにしています」

「一番ハッピーなのは日本代表が強くなったこと」

W杯に向けて「日本国民全員に大きなインパクトを与えるチャンスがある」と語る 【写真:アフロ】

 またリーチは個人的に実行している行動がある、宮崎でも別メニューで走っているときから、ペットボトルではなく、水をマイボトルに入れて持参していた。世界的に環境問題が取りざたされている中、少しでもゴミをなくそうと実践しているわけだ。

 リーチはリーダーグループと話し合い「僕らには日本代表として、日本国民全員に大きなインパクトを与えるチャンスがある。ピッチ内だけでなく、ピッチ外もファンに愛されるチームになるために小さな努力をしないといけない」という結論に至った。

 選手は合宿に訪れたファンへのサインに丁寧に応じて、盛岡合宿からは子どもたちへのラグビー教室など練習以外の活動にも熱心に取り組んだ。大学2年で初めて日本代表の合宿に来たときは、数人しかいなかったファンが何百人といる。試合も数千人だったのが、PNCでは釜石、花園での試合はソールドアウトとなった。「一番ハッピーなのは、日本代表が強くなったこと。ファンが増えたのもうれしい!」(リーチ)

「同じ目標に向かって、ひとりひとりが努力する」

日本開催でプレッシャーがかかるが、ワンチームで決勝トーナメント進出を目指す 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】

 9月、日本代表が南アフリカ代表戦のために再集合したときも、リーチはチームメイトに「1%の努力。フィールド外のこと、ウェイトの記入だったり、コンディションチェックをしっかりやったり、ペットボトル一つ一つの片付け、そういうところをしっかりしましょう」と話した。

 やはり、自国開催ということでリーチは「心境は違います。前回はほぼ期待ゼロでしたが、今回は期待100%なのでプレッシャーを感じています。最近キャプテンとして言葉が多くなってきて、プレーで引っ張ることができていないから、キャプテンとして試合を頑張っていきたい」と意気込んだ。

 最後に、「ワンチーム」とは具体的にどういうことを指すのかと聞かれ、リーチは「同じ目標に向かって、ひとりひとりが努力するのが『ワンチーム』です」とまっすぐに前を向いた。この4年間、やってきたことに自信があるからこその発言だ。日本開催、満員のお客さんというプレッシャーを力に変えて、きっとリーチが最高のパフォーマンスを見せて勝利に貢献してくれるはずだ。

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著者プロフィール

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

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