連載:未来に輝け! ニッポンのアスリートたち
新競技・バスケ3x3で杉本天昇が羽ばたく 五輪目指す大学トップスコアラー
大学ナンバーワンスコアラーの杉本天昇。東京五輪で新たに採用された「3x3(スリーエックススリー)」の日本代表候補に名を連ねる 【スポーツナビ】
昨冬の全日本大学選手権で得点王となり、今春の関東大学選手権でも得点ランキング2位を記録。勝負強さが光る3ポイントシュートや、巧みなステップと体の強さを生かしたドライブで得点を量産する。
5人制の年代別代表にも選ばれ、2017年の「FIBA U19バスケットボールワールドカップ」では、NBAのワシントン・ウィザーズに入団した八村塁らとプレー。過去最高の10位になった。
スコアラーの基礎はバスケどころ・秋田で
「シュートを決めたら“楽しい”という感覚」が芽生えたことをきっかけに、小学2年生からバスケを始めると、地元の山王中時代には、全国中学校体育大会に2度出場した。特に3年時は主将になったことで、リーダーシップは言葉よりも「自分の持ち味である得点力で引っ張っていく」とプレーで表現。いまに通じるスコアラーの基礎を培った。
ただ、選手として上位カテゴリーにいけば、総合的な力が求められるもの。進学した名門の土浦日本大学高(茨城)では、当時の監督・佐藤豊氏に「ディフェンスをやらないと試合に出さないぞ」と指摘され、なかなかプレータイムがもらえなかったという。
だが「絶対に試合に出たかったし、絶対に日本一になりたかった」と、コートに立つために「練習がすべて」と努力は怠らなかった。
「膝がガクガクになるまでやっていました」と地道なフットワークから真剣に取り組み、強みを伸ばすべくシューティングでも追い込んだ。「自分の今があるのは、土浦日大で佐藤先生に教わったことが大きかった」と振り返る。
そして大学では「外でただシュート打っていたら試合に出られない」と、本来の武器により磨きをかけた。もともと得点能力に秀でていたが、身長185センチはバスケ選手としては決して大きくなく、特段のジャンプ力やスピードはない。その代わり「ディフェンスを見ながら駆け引きを考えながらやっています」と、頭を使ってプレーすることを心掛け、チームメートや他大学の仲間と「ひたすら1対1」をすることで、スキルを上げていった。
3x3未経験にもかかわらず有力選手へ
自慢の得点力はバスケどころ・秋田で培った(写真左が杉本) 【(C) 3x3.EXE PREMIER 2019】
同年夏に開催のアジア大会で23歳以下による競技開催が控えていたこともあって、白羽の矢が立った。当の本人は「ルールもまったく分からない状態」で合宿へ参加。3x3は5人制に比べて、体のぶつかり合いが非常に多く、審判の判定基準も異なる競技特性を把握していなかった。そのため、日本ランキング1位の落合知也(大塚商会越谷アルファーズ)ら経験豊富な先輩たちとの練習では、「ファウルじゃないのかよ! と思いました。慣れるのが大変で、バスケではないぐらいのハードさだった」と面食らう。
だが、ここで杉本は心が折れるような選手ではなかった。
「代表に呼ばれて、自分なりにキャリアもプライドもあった」と、徐々に3人制に適応して、持ち味である得点力を発揮。国内外の遠征を経て、宮越康槙(青森ワッツ)、松脇圭志(日本大4年)、荒川颯(拓殖大4年)とともに、アジア大会に出場。今年も2月にBリーガー含む30名弱の選手が招集された代表候補合宿に呼ばれ、その後15名に絞られた2度目の合宿にも残留。今では有力選手に成長した。本人も「やってきたなかで、評価していただいたことはシンプルにうれしい」と話す。
とはいえ、彼は代表でまだ満足のいく結果を残せていない。前述のアジア大会では「チームワークが良く、メダルを狙えるぐらいだった」と、手ごたえを持って臨んだが、本人は大会途中に捻挫のアクシデントで離脱……。
「自分を責めましたけど、チームにも迷惑をかけた気持ちが強かったです」
杉本抜きで戦った日本代表は決勝トーナメント初戦で敗れ、ベスト8で散った。
今年の6月には、世界各国のU-23世代が集まる国際大会・FIBA 3x3 U23 Nations Leagueに出場するも、6チーム中最下位。「結果を出せなかったことに悔いが残っています」と、不完全燃焼に終わった。