新競技・バスケ3x3で杉本天昇が羽ばたく 五輪目指す大学トップスコアラー

大橋裕之

プロ挑戦と、それを後押しする環境

杉本が挑戦する、3x3と大学バスケの両立。そこには彼を後押しする環境の整備があった 【(C) 3x3.EXE PREMIER 2019】

 杉本は今夏、代表活動以外にも3x3のプロチーム・HACHINOHE DIMEと契約。日本や韓国のプロリーグにも参戦して、日の丸を背負って力を出し切れなかった悔しい気持ちも糧に、これまで以上に3人制に打ち込んだ。

「(代表に)行けない分、DIMEで練習をして、韓国(リーグ)へ行って優勝や3位という結果を残せました。また代表に選ばれたらいいですけれど、まずは自分のチームが一番大事。そこで結果を残してチームのために頑張ろうという気持ちが強かったです」とやってきたことに胸を張る。その証として、杉本は日本ランキングを自己最高の13位まで順位を押しあげるまでになった。

 加えて、この現役大学生の挑戦には、それを後押しする環境の整備があったことも触れておきたい。

 HACHINOHE DIMEは、国内にTOKYO DIME、OSAKA DIMEを擁する兄弟チームのひとつであり、この3チームは総称して「DIME」グループという。その代表者をBリーガーの岡田優介(京都ハンナリーズ)が務めており、杉本と松脇を獲得するにあたって、DIMEは日本大バスケットボール部とパートナーシップを締結するに至った。

 岡田代表はそれに先立ち、同部の片桐洋祐監督のもとを訪れ、「今後を含めた形でトライさせていきたい。学生スポーツなので2人だけを特別扱いするわけにいかないが、将来的な意味を含めてパートナーシップがあれば」と提案があったことを明かす。先方からの前向きな申し出に、岡田代表も「われわれにとってもありがたいこと。それを対外的に示すことで、日大だけでなく、ほかの大学にも非常にいい事例になる」と、それを快諾。3人制クラブと大学バスケ部が初めてタッグを組み、未来を作る一歩が踏み出された。

 そして一連の活動は、「3人制で結果を残して、5人制に戻ってきたら結果を残すことがチームに必要なことだと思う。日本大学として、ただ3x3をやっていたと思われたくない(杉本)」と、選手の責任感を促すことにもつながった。

五輪出場の前に目指すもの

HACHINOHE DIMEで優勝すること、大学ではリーグ戦とインカレでの優勝を当面の目標に掲げる。それを達成したあかつきには、五輪で日の丸をつけることも現実味を帯びるだろう 【スポーツナビ】

 五輪まで残すところあと1年を切った。現在、代表の主力を担うのは3x3国内ランキングトップ選手とBリーガーたちだが、選考のリミットは来年6月と言われており、杉本にも十分チャンスはある。岡田代表も「経験値で言えば他のプロの選手にも劣っていません。土壇場の度胸があって、完全にシュートを打ち切る姿勢は非常に3x3では大事で、そのメンタリティーを持っている」と代表入りに太鼓判を押す。

 もっとも、本人は「目指したい」と意気込みはあるが、「まだその場にも及んでいない」と、本音は慎重だ。3x3の国内リーグでは「HACHINOHE DIMEで優勝して、岡田さんを胴上げしたいです」と、自分を選んでくれたチームで結果を残すことに目指しており、日本大では8月24日より始まる関東大学リーグ戦、そして冬のインカレで10年ぶりに優勝をすることも、大きな目標だ。

 ポイントゲッターとして派手な印象をイメージしていたが、実際は目の前の大会で一緒に戦うチームメートとともに結果を出すことにこだわり、地に足のついた面を持つ。それゆえに幾多の経験を積み、確固たる自信を手にした先に、3x3日本代表として日の丸を背負う姿がはっきりと見えてくるだろう。

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著者プロフィール

1986年生まれ。3人制バスケットボール3x3をメインに執筆キャリアを積んでいるフリーランスライター。オリンピックの正式種目になる前から週末に各地の大会を行脚。トップリーグ・3x3.EXE PREMIERは2014年の開幕から全シーズン、ライターとして携わり、FIBA(国際バスケットボール連盟)が主催するクラブ世界一を決めるツアー大会、FIBA 3x3 World Tour Mastersの宇都宮大会は2016年より毎年取材へ。『hangtime』や『FLY Magazine』、JBA会員向け情報誌『TIPOFF』などに寄稿。

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