連載:輝きを取り戻した男たち

ストレートで勝負し続けるために――40歳・五十嵐亮太が開く、新たな扉

前田恵
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40歳を迎えた五十嵐だが、進化を模索しながら新たなピッチングを追求している 【写真は共同】

 10年ぶりに古巣・東京ヤクルトに戻った五十嵐亮太。馴染みのメンバーは、石川雅規や青木宣親など、もはや数えるほどしかいなかった。だが「それが逆に楽しみだった」と五十嵐は語る。「今の若い選手は僕らの時代と違い、みな目的意識を持って、やるべきことをしっかりやっている」。彼らに刺激を受けながら、40歳を迎えた五十嵐の新たな挑戦が始まった。

無限に広がる、ピッチングの可能性

 フォームのずれを修正する作業は、地道なものだ。マウンドの上だけではなく、ふだん歩いているときでさえ、軸のずれや体の緩みを敏感に感じ取り、姿勢を正す。日頃からそこまで意識していないと体はすぐずれ、元のフォームに戻ってしまう。自然に、無意識のまま、自分の体を正しく使い、動けるような仕組みを自らの感覚に植え付けていく。

「その作業が苦しいかといえば、どうかなあ……。“苦しい”は言い過ぎだけど、楽ではない。楽じゃないから、たまに辞めたくなる。今日くらい、自分の気持ちいいフォームで投げて抑えられないかなと思うこともあります。でも、こういった積み重ねって、崩れるのは早いんですよ。それを知っているから、余計グッと我慢しなくちゃならないんだって、自分に言い聞かせています」

「それができれば――」と、五十嵐は言う。

「投手寿命も長くなるだろうし、“新たな何か”が見つかって、次のステップに行けるかもしれない」

 フォームのずれを修正し、変化球の質を上げていく。そこで納得できる形ができれば、また新しいことにも手を伸ばせる、というわけだ。では、五十嵐の言う“新たな何か”とは、一体何なのだろうか。
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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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