ラグビー日本代表、異例の強化は実るか 「2チーム制」を選んだ指揮官の信念

斉藤健仁

日本代表42名を発表

リーチ マイケル主将(中央)を中心としたラグビー日本代表が、ワールドカップに向けて強化を進めている(写真は昨秋の欧州遠征) 【写真:アフロ】

 日本開催のラグビーワールドカップ開幕まで100日あまり。6月9日から7月中旬まで3回に渡って行われる宮崎合宿に参加するラグビー日本代表メンバー42名(FW26名、BK16名)が3日に発表された。代表候補は60名ほどいたが、1次選考という形でふるいにかけられた。

 このメンバーから31名がフィジー代表、トンガ代表、アメリカ代表と対戦するPNC(パシフィックネーションズ・カップ/7〜8月)に選ばれ、再び40名ほどで8月下旬に網走合宿を敢行、8月末にワールドカップに出場する最終スコッド31名が決まる。

日本代表候補とサンウルブズの2チームで強化

日本代表発表会見に臨んだジェイミー・ジョセフHC 【斉藤健仁】

 日本代表候補選手60名は、一部の選手はサンウルブズに参加しスーパーラグビーで実戦を積んでいたが、過去に試合出場数が多かった主力選手はしっかりと休養を取ってから、合宿を経て、特別編成チーム「ウルフパック」で試合に出場した。多少、選手の行き来もあったものの、日本代表を率いるジェイミー・ジョセフHCは2チーム体制で強化し、「全員を試合で起用する」という方針の下、選手を競わせた。

 2月、日本代表の主力選手を中心に開幕8カ月前から合宿をスタートさせた。主将のFLリーチ マイケルが「言い訳はできない」と言っていた通り、これは他の国と比べると異例の期間である。基礎練習やフィジカルトレーニングから始めて、実戦形式の練習を経て、3月末から5月まで「ウルフパック」を編成し、スーパーラグビーのBチームを中心に6試合戦った。

 ウルフパックは初戦こそハリケーンズBに敗れたものの、5勝1敗で終えた。「フィジカル的に物足りなかった」、「ワールドカップイヤーなのでウルフパックにいたほうがいい」と本音を語る選手もいた。ただPNCやワールドカップ本番のプレシーズンマッチとして捉えれば、格好の相手だった。代表の主力をレベルの高いスーパーラグビーでずっと戦わせて、本番でコンディションを落としてしまうリスクよりも、しっかりと調整に重きを置いた。

選手個々のメンタル、フィジカルに配慮

前回W杯以降に出場試合数が多かったPR稲垣啓太は、日本代表候補での活動となった 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 ジョセフHCは「(ワールドカップで)ピークを迎えるときに、みんながしっかり強化ができているところに集中している」とその意図を語った。指揮官の盟友である藤井雄一郎強化副委員長も「7月から徐々に上げていく」と語っており、2人の言葉は合致している。

 またジョセフHCはPR稲垣啓太を引き合いに、2チーム制で戦った意図をこう説明した。「私の方針はゲームタイムを与えることだった。(サンウルブズに送らなかった稲垣は)3年間ずっとラグビーを続けてきた選手なので彼をしっかりケアしたいと思った。レベルズ(豪州)でのプレー経験もある、スーパーラグビーの経験も十分ある。ケースバイケースで扱った」。また指揮官は「選考時のポリシーの一つであったのが、今まで3年間ぶっ続けでラグビーをやっていた選手はかなり負荷が多かったので、しっかりした休みを与えたいと思い、加味した」というように、選手個々のメンタル、フィジカル両方のコンディションに配慮していたことがわかる。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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