岩本勉がイチローとの名勝負を振り返る NPBで最も安打数を供給した男の秘策
NPBで最もイチローにヒットを打たれた岩本氏だが、イチローを抑えれば目立つ、というモチベーションで挑んでいたという 【写真は共同】
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類まれな記憶力に驚がく
活力の一つでしたね。僕が現役を退いて解説業をしている一方で、僕より2つ若い彼が、しかも世界の舞台で一線級の選手としてゴリゴリに戦っている。僕は彼とジャンルこそ変わりましたが、同じ“野球研究者”として……これは、彼のコメントにもありましたよね。野球研究者として、彼の存在には非常にモチベーションを上げてもらえました。
――初対戦は覚えていますか?
1994年のオープン戦かな。福岡ドームで、確かランナー一塁からライト前ヒットを打たれたと思います。ただ、そのときは自分も1軍に残るのに必死だったので、誰がどうとかマークする余裕もなくて、「カタカナのイチローかい」くらいの感覚でしたね。
――では実際、意識し始めたのは?
94年は、シーズン終盤(9月14日)に1打席、東京ドームでレフトフライに打ち取っているんですよ。この話には続きがあってですね、そのオフ、僕が同級生の選手に会いに、神戸のオリックス寮を訪問したとき、頼まれ物でイチローにサインをもらいに行ったんです。寮長さんにも許可をもらって、彼の部屋まで行きましてね。そこで初めてイチローと話をして、「俺のことわかる?」と聞いたら、「あ、岩本さんですよね。東京ドームで僕、レフトフライですよね」って全部しっかり覚えていました。これはすごいなと思いましたね。だって、数々のピッチャーと対戦しながら210安打して、首位打者になった年ですよ。その彼が、シーズン終わりかけの、順位もほぼ決まっているような中で出てきた敗戦処理ピッチャー相手の1打席を覚えているなんて。その年、1年だけサイドスローをしていたので、もしかしたら僕がよっぽど変な投げ方をしていたのかもしれませんが(笑)。
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