黒木知宏が考える「イチローの抑え方」 引退した今だから話せる“対策”
これまで明かすことがなかったイチロー対策を語ってくれた黒木氏 【写真は共同】
「心はいつもイチにあり」
どんなバッターにも魂の投球で真っ向勝負を挑んだ黒木氏にとってイチローの存在は特別で、彼と対峙(たいじ)することをいつも心待ちにしていた。
配球、球種の投球の組み立て、イチローの呼吸や間合いをいかに外すか。2人だけの空間で、自らのルーティンとイチローのルーティンとのギリギリのせめぎ合いが繰り広げられていた。
「今までは、イチローが現役だったから。僕の発言で少しでもイチローの成績に影響が出てはいけない」という理由で、これまで聞かれても詳しくは語らなかった『イチロー対策』。イチローの引退を機に、ようやく口を開いてくれた。
黒木が開幕9連勝を飾った2001年。もし自身の絶頂期にイチローと対戦していたら……。いま、思いを巡らせる。
<黒木知宏vs.イチロー 通算対戦成績>
69打数22安打 打率.319 0HR 7打点 11三振
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見せ球なしの3球勝負で決めたいが…
1998年7月7日。千葉ロッテが屈辱の17連敗を喫した試合を報じた新聞を見ながら、黒木はイチローとの対戦を振り返る 【スリーライト】
格好良く言うと、全部(ストレート、カーブ、シュート、スライダー、フォーク)です。何が得意かと聞かれると、「全部得意です」と答えていました(笑)。
――その中でイチローさんに対して使う球、使わない球というのはありましたか?
それはないんですが、先ほど言ったように、2ストライクに追い込むまでが大変でした。2ストライクに追い込んだ後の勝負球として、ヒントになったのがその7月7日の三振。頭の中にはずっとあったんですが、「やっぱりそうなんだ」と思ったのは、“強く振られない場所”なんです。インコース低めのスライダーを強く振って空振り、ということが結構あったので、みんなそこを狙って投げていたんですが、投げミスをしたときに危ないんですよね。イチローが合わせて打てるところで、長打になりづらい場所は、外角だったんですよ。外角の速い球はパチーンと叩かれるんですが、半面、緩い球にふっと手を出してくるようなところがあった。だから僕の勝負球はできるだけ外め、それもやや高めに意識を持っていっていました。仮に球が抜けても、外に逃げていくので、あまり大ケガはしないんですよ。
ただ問題は、追い込む前に打たれてしまうので、そこに持っていけなかった(苦笑)。追い込んでも、カウントが2-2にしてしまうと、そこでボール球になったら、3-2。どうしても四球を出せないような状況で、外にはなかなか投げられないでしょう。
――もしもう一度イチローさんと勝負するなら、いつに戻りたいですか?
2001年ですかね。あのころの僕は、いろんなものが見えていました。開幕から9連勝できてね。でも、イチローはもうメジャーに行ってしまっていた。2001年だったら、どうだったかな。被打率も3割超えでなく、2割ぐらいまで抑えられた可能性もゼロじゃない。そこでアップデートしていくイチローと対戦したらどうだったかなって、夢見心地に思います。
――では2001年に戻って、勝負していただきましょう。まず1球目は?
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