連載:ライバルが語るイチローの抑え方

岩本勉が考える「イチローの抑え方」 困ったときは思い切って…

前田恵
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どのコースも高い打率を残したイチロー。各チームはイチローをどう抑えるか、ミーティングを重ねたというが有効な手立ては見いだせなかった(写真の投手は有倉雅史) 【写真は共同】

 オールスターで顔を合わせたときのことだ。岩本勉氏が「頼むから、早くアメリカに行ってくれ」と冗談で言うと、イチローからは「球団と話しているんですけど……」と真摯(しんし)な答えが……。

 その後のイチローの大活躍は、ご存知の通りだ。

 結果論ではなく、グラウンドで実際に対戦したからこそ、岩本氏はイチローのMLBでの成功を強く確信していた。「イチローを抑えて目立ちたい」と野心にあふれていた現役時代。岩本氏は手を変え、品を変え、あらゆる手段を駆使してイチローを抑えにいったが、NPBで一番多くのヒットを献上してしまった。そんな記録も、岩本氏はいまでは誇りに思っている。

「バッターがピッチャーを、ピッチャーがバッターを高める」

 イチローとの対戦を振り返りながら、その言葉に誤りはなかったと岩本氏は言う。

「まいどっ!」のお立ち台か、それとも、さらなるヒットの献上か。もう一度イチローと対戦する岩本の運命はいかに?

<岩本勉vs.イチロー 通算対戦成績>
91打数36安打 打率.396 5HR 10打点 8三振

イチローの打席は目をつぶる判断も…

際どいコースも、ど真ん中もさほど被打率は変わらないと岩本は話すが… 【スリーライト】

――岩本さんにとってイチローさんは、好敵手、という感じですかね?

 ライバルであり、自分を高めてくれる、格好の特効薬。例えば調子が悪くて3連敗くらいしていても、オリックス戦でイチローを抑えて勝ったら、一気に調子が上がってくるとか。特別な存在ですよ。彼と対戦できたのは、僕の誇りです。人ができないような打ち方で、人ができないようなポイントでヒットを重ねた偉人。彼に熱くさせてもらったおかげで、僕の選手寿命は間違いなく1年、2年延びたと思いますよ。大きな刺激でしたからね。

――「ヒット株主」の座は残念ながら奪われてしまいましたが……(笑)。

 あー、ジョン・ラッキーね(苦笑)。もう、憎いなあ。僕の36本を抜く、37本目。あの新聞を見たときはショックやったわ。「記録は抜かれるためにある」とか言いますけど、僕、これだけは抜いてほしくなかった。

――では、もう一度現役時代に戻ってイチローと対戦するなら、どういう配球でいきますか?
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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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