sportsnavi

走れ宮市亮! ケガする前よりも速く
引退危機からの復帰、充実のシーズン

プロ入り後、最も出場時間を得たシーズン

宮市亮、26歳。いま何を思うのか? 度重なる故障を乗り越えた不屈の男に迫る
宮市亮、26歳。いま何を思うのか? 度重なる故障を乗り越えた不屈の男に迫る【Getty Images】

 4月下旬のある日、ドイツ・ハンブルク郊外にあるFCザンクトパウリの練習場。実戦形式のトレーニングのなか、宮市亮はダッシュを繰り返しては、得意のドリブルで対峙(たいじ)する相手を何度も振り切っていた。

 トレーニングが終わると広報担当者と流暢(りゅうちょう)なドイツ語で談笑しながら、宮市は筆者の前に現れる。一通りのあいさつを終えると、宮市は「ミーティングがありますから」とクラブハウスの中へ入っていった。取材開始が1時間ほど遅れることを告げられたわけだが、話し終えると不思議とうれしくなった。


 宮市の明るく、フレンドリーな人柄を喜んだわけではない。何より、ここ数年の宮市はケガに見舞われ続けていただけに、その彼が元気そうなのがうれしかったのである。


 宮市は2015年夏に英プレミアリーグのアーセナルから独ブンデスリーガ2部のザンクトパウリに完全移籍で加入すると、直後に左ひざ前十字じん帯を断裂して、そのシーズンを棒に振った。そして、17年6月に今度は右ひざ前十字じん帯を断裂。サッカー選手にとって“致命傷”とも言われるひざのじん帯を左右とも断裂しているのだ。


 さらに、過酷なリハビリを経た昨夏、ようやく復帰かと思われたところで3度目の前十字じん帯断裂が危惧されたが、大事には至らずに宮市はピッチに帰ってきた。今季は、ブンデスリーガ2部で24試合(第33節終了時)に出場し、プレータイムは延べ1200分を超えるなど、プロ入り後、最も出場時間を得たシーズンを過ごしている。宮市は、いま何を思っているのだろうか。


「開幕前の調整で出たU-23の試合で『あれ、やっちゃったかな?』って思ったときは、最初に診てもらった医者からも『もう引退かもしれない』なんて言われたのですが、結局、日本のドクターの方に見てもらったら大きな問題はないとのことでした。ただ、昨季は公式戦で1試合もプレーしていなかったので、冬くらいからフィットできればいいかなと思っていたら、9月に最初のチャンスをもらい、点を取ることができた。そこから試合にも使ってもらえるようになって、大きなケガなくシーズン終盤まで来れました。開幕前はまさかこんなにチャンスがもらえるとは想像もしていなかったですし、こうしてシーズンを通して過ごせたのは本当に久しぶりというか、初めて。ただ、僕の中ではこれからっていうか、ちょっと早いですが、オフを挟んでの来季が楽しみ。来季はさらに行けるんじゃないかって、自分自身、期待しているんです」

スピードはケガする前より上がった

インタビューに答える宮市の表情は明るい。充実のシーズンを過ごしてきた証拠だろう
インタビューに答える宮市の表情は明るい。充実のシーズンを過ごしてきた証拠だろう【栗原正夫】

 宮市が大きかったと語るのは、約1年4カ月ぶりの公式戦出場となった第6節のインゴルシュタット戦。後半に途中出場すると、0−0で迎えた82分、背後からDFとGKの間に大きく蹴られたボールに素早く反応し、GKの手前でバウンドしたボールに頭で合わせ決勝ゴールを挙げた。


「あそこでチャンスをもらい、決められたのが大きかった。これまであんなふうにゴールを決めたことはなかったですが、ルーズボールにも『GKも吹っ飛ばしたろ!』っていう気持ちで行ったのが良かったのかも」


 その後は、主に右サイドで出場機会を得て、第33節までに5ゴールをマーク。うち4ゴールが頭で決めたものだということには、宮市自身「驚いている」と笑い、チームメートからも「オマエはヘディングでしかゴールを決められないのか」とからかわれるという。


 ただ、クロスや競り合いに怖がらずに頭で飛び込むプレーは、これまでの宮市にはなかったカタチともいえ、新たな武器を手にしたともとれる。もちろん、10代でプミレアリーグを沸かせたスピードも健在で、プレースタイルが大きく変わったわけではない。


「元々、左サイドが得意だったのですが、右も長所になりつつあるし、もうケガの怖さもない。スピードはケガする前より上がったくらいだし、スプリント回数だってチーム内でも一番多いというか。そこはリハビリの取り組みが良かったと思っているし、お世話になったフィジカルトレーナーの杉本(龍勇)さんらには感謝しています。いま50メートル何秒か? 最近は計ってないけど、5秒台では走れると思います」

HSVとのダービーは大敗。ライバルに敗れたことで昇格は遠のいた
HSVとのダービーは大敗。ライバルに敗れたことで昇格は遠のいた【Getty Images】

 明るく話すその表情からも、本人が誰より手応えを感じているのがよく分かる。


 前半戦を3位で折り返したザンクトパウリは、3月10日の第25節、同じくハンブルクに本拠を置くハンブルガーSV(HSV)とのダービーまでは4位と1部昇格に向け好位置をキープしていた。だが、そのダービーに0−4と大敗すると、その後はズルズルと5試合勝ち星から見放され、昇格の希望は遠のいた。


「正直、前半戦は運で勝った試合も多かったですけどね。確かに、(昇格に向け)行けるかもと思った瞬間もありました。ただ、ケルンやHSVは1部にいておかしくないチームだし、今季はパダーボルンやウニオン・ベルニンもすごくいいサッカーをしている。やっぱり力のあるチームが上位にいるってことだなとは感じています」

栗原正夫

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

スポナビDo

イベント・大会一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント