- Baseball Geeks
- 2019年4月15日(月) 11:00
トラックマンやスタットキャスト(Statcast)に代表されるトラッキングシステムの導入により、野球界には「革命」が起こっています。見えなかったものが見えるようになり、野球の「真実」が、徐々に解き明かされ始めています。
連載「それってホント? 野球の定説を検証」では、「あのときの僕」が信じていた野球の定説をデータやスポーツ科学を使って検証。観る人・プレーする人・支える人すべてに、野球の真実・野球の新たな面白さをお届けします。
第1回は「新しいスイング理論」について。
OPSから見るフライボールの効果

「ボールを上からたたけ!」。多くの選手がこの指導を受けたことがあるだろう。しかし近い将来、この指導が変わるかもしれない。
メジャーリーグではStatcastの出現により、打球速度や打球角度といったことを、データで評価できるようになった。
データを分析していく中で、まず最初に分かったのは、フライ打球は「長打率」において非常に効果的ということ。表1を見ると、ゴロ打球に対しフライ打球は長打率が非常に高い。そして長打率が上がると、セイバーメトリクスの指標であるOPS(出塁率+長打率)も高い成績となっている。

続けてメジャー過去10年のデータを分析すると、実はOPSは打率よりも得点との相関が高い事が明らかとなった。つまり、フライ打球は長打率やOPSを向上させ、ひいては得点の向上に大きく寄与すると言えるのだ。


また、打球そのものを分析できるようになったことで、最適な打球角度も浮かび上がってきた。表2を見ると、最も高い長打率を記録しているのは、打球角度が20度台のときであった。このようにStatcastによって、最適な打球角度を客観的な数値として、目標に設定できるようになった。

「フライ打球の有効性」、そして「どんな打球を放てばいいか」が明らかになってきたことで、メジャーリーグではいわゆる「フライボール革命」に拍車がかかった。実際に、2017年にはMLB歴代最多の本塁打数(6105本)を記録することとなった。