公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップ(RWC)に向けて」の第90回が2月20日、東京都港区の赤坂区民センターで行われた。
今回は「ラグビーとリーダーシップ 〜ワールドカップに向けてのサンウルブズの役割」をテーマに、サンウルブズを運営する一般社団法人ジャパンエスアールCEOの渡瀬裕司氏をお迎えし、ラグビージャーナリスト・村上晃一さんの進行で講演が行われた。
CEO期待の選手は?

スーパーリーグ参入4年目を迎えたサンウルブズ。今季から練習拠点を千葉県市原市に移し、クレイグ・ミラーとマイケル・リトルが共同キャプテンを務める。講演時点では0勝1敗としていたチームのなかで、渡瀬氏が注目選手としてまず名前を挙げたのはCTBのシェーン・ゲイツだ。
「抜群のスピードが武器で、テレビで見るより肉眼で見ると本当に速いです。そして本当に練習熱心。厳しいメニューの後のシャトルランでも、毎回彼がトップで帰ってきます。アタックのキープレイヤーになっていくと思いますよ」
ディフェンス面で期待を寄せたのは、日本代表にも名を連ねるCTB中村亮土とSO松田力也。「彼ら2人が入ったときのディフェンスのプッシュ、前に出るスピードが本当にいい。ラインスピードが上がって、しかもしっかりディフェンスできているので、かなり出番が増えると思いますよ」。
一方、懸念していると明かしたのがセットプレー。シャークスとの開幕戦(2月16日)では組織的なディフェンスが機能しながらも、セットプレーから崩されてペナルティを与える悪循環に陥った。こちらはPR山下裕史、Loトンプソン・ルーク両選手の名前を挙げ、スクラムやラインアウトの立て直しに期待を示した。
サンウルブズが担う大きな役割
今年はサンウルブズと日本代表の強化を連動させるべく、W杯トレーニングスコッドの代表選手とサンウルブズの選手は分かれて練習している。現時点では経験値の高い選手がW杯トレーニングスコッドで調整し、若手選手やトップリーグで出場機会が限られた選手たちはサンウルブズで実戦経験を積む、というすみ分けだ。
この両チームが融合する見通しを渡瀬氏は「3月下旬から4月」とした。「徐々に入れ替わっていきますが、4月に国内で2試合やりますので、そこではかなりレベルの高い水準のチームになっているのではないかなと」。
2月に発表されたサンウルブズ傘下の特別チーム「ウルフパック」の編成も、代表強化のため選手に試合経験を積ませることが目的だ。渡瀬氏は「練習だけやっていても選手強化にはつながりません」と試合経験を重視している。
「例えばニュージーランドにはスーパーラグビーのチームが5チームあって、それがニュージーランド代表の強化につながっている。南アフリカ代表ならスーパーラグビーに4チーム、それ以外の2チームはヨーロッパのリーグに参戦しています。日本の場合はサンウルブズ1チーム。本当に強い代表チームを作っていくためには、まだまだ足りないんです」
ハイレベルな試合で揉まれることは選手強化だけでなく、日本ラグビー界の足腰を鍛えることにもつながるという。
「(参戦して)選手のレベルは上がっていますし、一番大きいのはスタッフの経験値です。今までは勝つために海外からコーチングチームなど、スタッフ丸ごと持ってきていました。しかしその後は総入れ替えなので、何も残らない。
スーパーラグビーでは、日本人のコーチが何人か入って経験を積んでいます。それがないとなかなかヘッドコーチもできませんし。コーチだけではなくてドクターやトレーナーもそう。通訳も、われわれのようなマネジメント面の人間もそうで、非常にいい勉強になっています。こういったことが今後の日本のラグビーをドライブしていく財産になっていくと思います」
スーパーラグビーに参戦している国からは、トップ層のレベル維持のためチーム数を減らすことを求める声もあると言う。21年以降はサンウルブズの参戦も未定だ。しかし日本など中堅国の底上げは長い目で見ればラグビー界の発展につながる。
「一生に一度は、ジャパンがオールブラックスに勝つところを見たいじゃないですか」と渡瀬氏。サンウルブズが担う役割は大きい。