4季目サンウルブズが担う大きな役割 CEO語る「ウルフパック」の意図は
釜石開催が実現に至らなかった理由
ファンからの質問に答える渡瀬氏 【スポーツナビ】
――秩父宮ラグビー場以外での国内開催はできなかったのでしょうか。例えばW杯の会場など。
今年は検討したのですが、結果的にできなかったです。大阪など都市部では日本代表の試合が予定されていてなかなか難しかった。一方で、釜石開催などの話もありました。ただ、海外のチームが来日してさらに遠方へ移動する、その時間の確保が非常に難しかったです。毎週試合があるなかで、日本の次は南半球に飛んだりしますので。
関西国際空港や中部国際空港、このあたりをもう少しうまく使ってできないかということは引き続き検討したいと思っています。あとはシンガポールからの直行便がある九州も。ひょっとすると南アフリカのチームをそこに持ってくることができれば……などと思っていますが、これも交渉ですね。
ただ今後、おそらくトップリーグとも日程が重なっていくので、なかなか秩父宮だけでの開催にはならないかなと思っていますので、より検討したいです。
――大学生のサンウルブズ入団予定はないのですか?
ぜひやりたいとずっと思っているのですが、なかなかできていません。特にW杯が近いのでコーチ陣にそこまで余裕はないだろうと。ただ、来年以降はそうしたいと思っていますし私自身、大学ラグビーに深く関わってきた人間なので、1人でも多くそういった選手を取り込んでいかなければいけないと思っています。
――W杯に出られない選手を今季のサンウルブズで出すというのは、強化の観点でどうなのでしょうか?
出られないというか、若手ですよね。これは大事だと思っています。ただ人数を増やすとデメリットが生まれることもあるので、そこのバランスが非常に難しいですよね。
――ヘッドコーチ(HC)が毎年変わるのはいかがなのでしょうか。
今季はトニー・ブラウンHC、スコット・ハンセンHC代行となっていますけれども、日本代表強化のためジェイミー・ジョセフ以下の統率をしっかり取るようにしています。日本代表という大きな枠の中で、それぞれが落とし込んでやるという形は非常に稀(まれ)です。本来であれば複数年契約のヘッドコーチがしっかり見るべきなのだろうと思います。
私もすごく難しいと思っているのが、負けが込んできたときに今後、プロチームとしてヘッドコーチをどうするのか。他競技の方にも聞いたりしたのですが、例えばサッカーだと「開幕何連敗で監督交代」となるじゃないですか。これが本来プロスポーツのあるべき姿だと思うのですが、ラグビーというスポーツにおいてそれは本当にいいのかと。今いろいろと考えているところです。
ニュージーランド協会の強化担当と話をした時も、彼らは「変えるべきではない」と言っていました。ラグビーは評価に時間がかかるスポーツだと言われます。その一つの周期は4年なのかもしれないなと思っています。
――サンウルブズの給料が安いと聞いています。
僕の給料ですか?(一同笑)
どうでしょうか、ほかのスーパーラグビーのチームに比べると高いと思います。スーパーラグビーの相場って結構低いんです。サラリーキャップのような制度があることもありますが。ニュージーランドに行くと、高い選手だと6カ月で2000万円くらいだと思いますが、安い選手は本当に安いです。1カ月10万円とか、それくらいでやっている選手もいるのではないでしょうか。
――ジャパンエスアールのスタッフは、スーパーラグビーのシーズンオフは何をしているのでしょうか?
シーズンが終わったらすぐに来季の準備に入ります。売り上げを伸ばすための反省から入って、ファンクラブをどのように運営するかとか、オフの間のイベント内容とか、グッズとか……。
チームにいたっては、次のシーズン全部のスケジュールをもう決めるんですよ。試合日程だけでなく、どう移動して、何時に試合終わったら何時のフライトに乗って、と細かいところまで。さらにそこから、練習はどこでどのように組むか、ということをヘッドコーチ含めて決めていきます。後はまあ、お金集め。これがメインです。
シーズンが終わったら、すぐに次のシーズンのレールをみんなで考えて敷かなければいけない。シーズン中はその上をがーっと走り抜けるイメージですね。
あなたにとってサンウルブズとは?
「ラグビーを通じて少しでも世界に日本を認めさせたい」と語った渡瀬氏 【スポーツナビ】
-ミッション
世界とたたかい、日本を強くする。
-ビジョン
日本に誇りを。世界に手本を。
-スローガン
Challenge is everything.
ビジネスも含めて考えると、日本の縮図じゃないですがなかなか世界に打ち勝てないところがあります。私は留学等で海外に住んでいたことがあるのですが、日本を馬鹿にされると頭にきたり、どこかわれわれを見下されたような態度に接したとき、すごくそれが嫌で何とか見返したいと思っていました。いろいろなところでそういう場面があると思います。
それが私のバックボーンにあるので、ラグビーを通して日本を世界に少しでも認めさせたいというのがあります。ラグビーの強い弱いだけでなく、ラグビーを通じたビジネス面も含め、世界の手本となるようなものを作っていかなければならないなと思います。日本には武士道はじめ、歴史的にもいろいろとオリジナルの学ぶべきところがあります。そういうところも含めて日本の良さを使って世界に勝つ、ということかなと思います。サンウルブズはまさにその先頭を走っている、そういう存在です。