連載:引退、決断のとき

過去ではなく未来を見続けてきた楢崎正剛 サッカー人生の記憶と想いを整理する

後藤勝
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引退時の胸の内を明かしてくれた楢崎正剛。このインタビュー後に「名古屋グランパス クラブスペシャルフェロー(CSF)」の就任が決まった 【撮影:熊谷仁男】

 シーズンが始まる前には今年限りで引退しようと決めていた心も、いざ閉幕を迎えると揺らいだ。迷った末、2018年の暮れには、もはや士気が昂ぶらないことを認め、あらためて引退を決意した。

 引退直後のアスリートならではの心の動きを、楢崎は包み隠さず語る。現役を退くと決めると、いろいろなものが見えてくる。選手生活を送っているうちは振り返ることができなかった記憶を辿り、エピソードが掘り起こされ、それが気づきとなり糧となる。

 楢崎正剛は、次にどこへ向かっていこうとしているのか。その断片を探った。

サッカー選手でなくなった初めてのシーズンオフ

現役引退の記者会見を終え、花束を手にするJ1名古屋のGK楢崎正剛選手=1月11日午後、名古屋市 【共同】

――引退発表のあった1月8日から記者会見を実施した11日までは慌ただしかったですか?

 そうですね、想定質問への答えを考えたりはしたものの、特に気負わずに当日を迎えました。引退を発表した時は寂しい気持ちもしましたけど、でも感傷的になったのはその時だけですね。会見の時には最後のひと仕事だ、と思って臨んでいたので。

――なるほど、会見場に足を運んだ時には、もう「引退した後の、いち個人としての楢崎正剛」になっていた、と。川口能活さん、さきほどお話のあった中澤佑二さん、小笠原満男さんなど、じつに多くの著名な選手が引退して、平成も終わり……。

 ちょうどいいでしょ(笑)。もう、ぼくが(選手として)後の世代に残すようなこともない。やりきったという感じですね。いまは、次にどんな仕事ができるか、グランパスと相談しているところです(※このインタビュー後「名古屋グランパス クラブスペシャルフェロー(CSF)」の就任が決まった)。

――そうして次を模索しつつ、どんな一日を過ごしているんですか?

 シーズンオフの延長みたいな感じですね。なんだかんだと複数のメディアからの取材に応じて、それなりに忙しく過ごしています。本当のオフは取材も入れずに完全休養ですから、そこが違うかな。要はサッカーをしていないだけです。だらだらしているわけでもないし(笑)。

――ご家族の反応は。

 意外と家にいる時間が少なくて。だから、引退した実感はあまりないかもしれないですね。12月の半ばから下旬までのほうが家にいる時間が多くて、その時は無職がダラダラしているみたいに(笑)思われていました。家族には「この時期、サッカー選手はみんな休んでいるんだよ!」と言い張っていましたけど、いよいよそれが言えなくなってきた(笑)。まあ、こうして引退特需じゃないですけど、いまはTV出演をしたりインタビューに応じたりで仕事があるので、家にいないで済んでいます。これが落ち着いてきたら、いよいよ次のステップですね。
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著者プロフィール

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」 (http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。「サッカー入門ちゃんねる」(https://m.youtube.com/channel/UCU_vvltc9pqyllPDXtITL6w)を開設 。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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