連載:引退、決断のとき

いまの自分は100パーセントなのか? 楢崎正剛だけが感じていたもどかしさ

後藤勝
アプリ限定

楢崎正剛にとって、現役続行と引退の境界はどこにあったのか? 【撮影:熊谷仁男】

 昨シーズンの終わりに、長年のライバルであり盟友だった川口能活が惜しまれつつ引退。セレモニーでは楢崎が花束を贈った。見送る側の楢崎までもが現役から退くことになろうとは――。年末に小笠原満男が現役引退を表明。明けて1月8日、今度は中澤佑二と同時に、楢崎が引退の意思を明らかにすることとなった。中澤40歳、楢崎42歳。フランスワールドカップ、ナイジェリアワールドユース、シドニーオリンピック、日韓ワールドカップを契機に日本サッカーを押し上げたレジェンドたちがピッチを去り、ひとつの時代が終わる。

 試合中に頭部を骨折してもなおプレーを続けたほどの頑健な巨躯を誇り、年齢による限界を感じさせなかった日本の守護神が「やめる」という決断をしたのはなぜなのか。現役続行と引退の境目とはなんなのか。その襞を調べようと、楢崎本人を直撃した。

初めて感じた「心の揺れ」

昨年12月2日、川口能活の引退セレモニーにサプライズで登場。そのときの胸中とは 【写真:築田純/アフロスポーツ】

――川口能活さんの引退セレモニーが昨年の12月2日、J1閉幕の翌日でした。そこにサプライズで登場した時、はたして楢崎さんの胸の内はどうだったのでしょうか?

 やめるかどうかはまだわからないにしても、最後のつもりで臨んで。でも終わってみて、このままで終わっていいのかという気持ちもあり、はっきり言って五分五分でした。シーズンが始まる前は今シーズン限りで引退しようと思っていましたが、そのタイミングを判断しかねる感じでシーズンを終えてしまい、本当に悩んでいました。

――既に川口さんは引退を決断して、先に進んでしまっている。ところが、楢崎さんはまだ迷っている。この差はなんなのだろうと考えませんでしたか?

 考えましたよ。最後の舞台を残した状態で引退を決めて、自身がプレーする機会を用意する。それはチーム状況にもよりますけど――そういう場を得て、セレモニーでみんなに見送ってもらう。本来であれば、自分もそういうやめ方をイメージしていました。だけど、名古屋グランパスが置かれた状況も、自分の気持ちもそうではなかったので、致し方ない経過だったとは思います。

――グランパスが残留できるかできないかという……。

 そうですね、最後までわからなかったですし。ああいう(川口さんの)形でなくとも、やめる時はやめるだろう――と自分自身を納得させました。結局は自分の気持ちに正直になるしかなかったですから。
  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 次へ

1/2ページ

著者プロフィール

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」 (http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。「サッカー入門ちゃんねる」(https://m.youtube.com/channel/UCU_vvltc9pqyllPDXtITL6w)を開設 。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント