いまの自分は100パーセントなのか? 楢崎正剛だけが感じていたもどかしさ
楢崎正剛にとって、現役続行と引退の境界はどこにあったのか? 【撮影:熊谷仁男】
試合中に頭部を骨折してもなおプレーを続けたほどの頑健な巨躯を誇り、年齢による限界を感じさせなかった日本の守護神が「やめる」という決断をしたのはなぜなのか。現役続行と引退の境目とはなんなのか。その襞を調べようと、楢崎本人を直撃した。
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初めて感じた「心の揺れ」
昨年12月2日、川口能活の引退セレモニーにサプライズで登場。そのときの胸中とは 【写真:築田純/アフロスポーツ】
やめるかどうかはまだわからないにしても、最後のつもりで臨んで。でも終わってみて、このままで終わっていいのかという気持ちもあり、はっきり言って五分五分でした。シーズンが始まる前は今シーズン限りで引退しようと思っていましたが、そのタイミングを判断しかねる感じでシーズンを終えてしまい、本当に悩んでいました。
――既に川口さんは引退を決断して、先に進んでしまっている。ところが、楢崎さんはまだ迷っている。この差はなんなのだろうと考えませんでしたか?
考えましたよ。最後の舞台を残した状態で引退を決めて、自身がプレーする機会を用意する。それはチーム状況にもよりますけど――そういう場を得て、セレモニーでみんなに見送ってもらう。本来であれば、自分もそういうやめ方をイメージしていました。だけど、名古屋グランパスが置かれた状況も、自分の気持ちもそうではなかったので、致し方ない経過だったとは思います。
――グランパスが残留できるかできないかという……。
そうですね、最後までわからなかったですし。ああいう(川口さんの)形でなくとも、やめる時はやめるだろう――と自分自身を納得させました。結局は自分の気持ちに正直になるしかなかったですから。
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