連載:キズナ〜選手と大切な人との物語〜

母が遺した思い…兄は決意した 弟・比江島慎を全力でサポートしようと

矢内由美子
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観戦に来ないと思っていた兄だが、実は……

比江島慎が語る兄との思い出。高校生になり距離ができていたと思っていたが…… 【佐野美樹】

 小学校の授業が終わると、3歳違いの兄と弟はバスケットボールをひとつだけ持って、急いで自転車で公園に向かった。そして、辺りが暗くなるまで一対一を繰り返した。それから十数年後、弟は一対一で無類の強さを発揮するバスケットボール選手に成長し、日本代表の中心選手へと成長した。

 今秋に中国で開催されるバスケットボールワールドカップ(W杯)のアジア地区2次予選は現在、クライマックスに突入している。比江島慎(栃木ブレックス)は日本をW杯へ導くべく、アジア予選の行われる中東で、最後の調整を行っている。
 中学と高校の頃は、大きな大会となれば母の淳子さんが必ず試合を見に来てくれたのに比べ、兄の章さんが自分の試合を見に来た記憶はなかったと、比江島は言う。

「だから、僕が大学(青山学院大)4年のときのインカレを見に来てくれたときは、もう、驚きでした。『え? なんで?』というような。もちろん身内だから、来てもらってうれしかったですよ。でも、それ以上に、驚きが大きかったんです」

 だが、実際はそうではなかった。章さんに聞くと、事実は違っていた。章さんはフフっと笑いながらこう話してくれた。
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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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