唯一無二のステップで魅了した高橋大輔 「今のフィギュア」に挑戦し、感じた思い

沢田聡子

全日本は「居心地がいい」

高橋大輔は5年ぶりとなる全日本選手権で2位に入った 【写真:坂本清】

 2018年のフィギュアスケート全日本選手権、男子シングル・フリー。最終グループの5番滑走は、5年ぶりに全日本に戻ってきた高橋大輔(関西大KFSC)だった。平昌五輪日本代表の宇野昌磨(トヨタ自動車)、田中刑事(倉敷芸術科学大)とともに臨む6分間練習。今季現役に復帰した高橋が、目標としてきた大舞台だ。

 近畿選手権で3位、西日本選手権で優勝と好成績を収め出場権を得た全日本選手権で、高橋はショート2位発進。トリプルアクセルでフリーレッグ(氷に接していない方の足)を氷についてしまった以外には目立ったミスはなく、ステップでは巧みな足さばきをみせて観衆を魅了した。ショート終了後の囲み取材で、高橋は本当に楽しそうだった。

「ここを目標に闘ってきた仲間とともに力を出し尽くす全日本選手権は、本当に自分にとって居心地がいい」

 また、全日本に臨む心境についても、次のように話している。

「『これがフィギュアスケート』という概念自体も、時代とともに変わってくると思う。この時代に合うスケートにどれだけ近づけるか今シーズンは頑張ってみよう、というところがあった。その中で、今まで応援してくれている人、また今回たまたま見た方にも『高橋大輔っていいな』と見てもらえたら、また改めて自信にもつながると思う。『やっぱりレジェンドって言われるだけあるな』という感想をもらえたら嬉しい」。

メダルは「まったく想像していなかった」

高橋(左)は得意のステップで4回転のミスをカバーし「想像していなかった」表彰台に上がった 【写真:坂本清】

 念願の最終グループに入って迎えたフリー、一つの焦点は4回転に挑戦するかどうかだった。高橋は、6分間練習で4回転トウループが決まったことで、本番でもチャレンジする決断をする。しかし、演技冒頭で果敢に挑んだ4回転は3回転になってしまう。直後のトリプルアクセル―ダブルトウループは2点以上の加点がつく素晴らしい出来栄えだったが、その後のジャンプにまたミスが続く。「ふがいない演技だった」と高橋は振り返っている。

「4回転を入れた中でのプログラムの練習回数を考えると仕方ないのかな、というところもある。4回転をプログラムに入れたのは最近で、その構成での練習量が足りなかったんだろうなと」

 しかし、流れがいいとは言い難い演技の中でコレオシークエンスに入ると、高橋は会場の空気を自分のものにした。たとえ4回転が入らなくても、彼にしか踏めないステップがある。高橋が言及したように常に変化していくフィギュアスケートの中でも、そのステップは唯一無二であり続けるのだ。

 総合順位で高橋は宇野に次ぐ2位となった。「全日本選手権のメダルは、まったく想像していませんでした」と高橋は言う。

「ショート後に最終グループに入るのすら難しいんだろうなと思っていた中で、メダルはまったく想像していなかったです」

 演技構成点で高い評価を受けたこともあり、高橋は優勝した宇野、3位の田中とともに表彰台に立つことになった。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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