唯一無二のステップで魅了した高橋大輔 「今のフィギュア」に挑戦し、感じた思い

沢田聡子

世界選手権を辞退 見据える未来とは

自身の覚悟の程と、後進の成長を考慮し世界選手権代表は辞退。「もっともっと向上していけるように」と前を向いた 【写真:坂本清】

 今年の全日本選手権は、来年3月に行われる世界選手権(埼玉・さいたまスーパーアリーナ)の代表最終選考会を兼ねている。高橋は、ケガの影響でソチ五輪シーズンに埼玉で行われた世界選手権に出られなかった過去がある。そのため、再び同地で行われる今季の世界選手権には思い入れがあるという。

「やっぱり出たかったんですけど……これが今年じゃなく2年前に現役復帰を決断していたら、もしかしたら狙ったかもしれない」

 全日本2位の高橋は通常であれば代表に選ばれる立場だが、「世界で闘う覚悟はできていない」として、世界選手権出場を辞退することを明らかにした。自身の覚悟の程と、後進の成長を考慮した上で下した決断だった。

「フィギュアスケートがすごく好きで、自分が頑張って(世界選手権出場を)勝ち取りたい気持ちと同じぐらい、後輩達が成長してレベルアップしてもらいたいという気持ちがある。冷静に考えて判断して、僕じゃないだろうっていう」

 同時に高橋は、自らの未来も見つめていた。

「自分の中で全日本を目標にやってきて、選手としての『この次』は終わってから考えると思っていた。なので今はなんとも言えないですけれども、スケーターとしては今後も滑り続けていきたいので、これまでの経験は必ず生きると思います。披露する場がどんな場所であったとしても、全日本までやってきた今のレベルを落とさないように、もっともっと向上していけるようにやっていかなければ、と思います。今日のフリーの結果を見ても、自分のメンタルの弱さも改めて感じることもできたので、滑り続けるには精神的にも強くなっていかなければいけないな、と思わせてくれた全日本だった」

 32歳の高橋が全日本で見せたのは、最後まで4回転に挑む競技者としての姿勢と同時に、踏み始めた途端に会場中の視線がそこに集中していく華麗なステップだった。深いエッジワークと音楽を奏でる上半身の動きで、見る者の目を引きつけて離さないステップ。これからも競技者として闘い続けるかどうかは自身が決めることだが、18年の全日本選手権で見た“高橋大輔のステップ”を、私達は決して忘れないだろう。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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