sportsnavi

第95回箱根駅伝

連載:箱根駅伝の5つの「なぜ」に答える
5区のランナーはどうやって選考するのか

アプリ限定

箱根駅伝が他と一線を画するのは“特殊区間”山区間があるからだ。では、各大学の監督は山上りの特性をどのように見極めているのだろうか
箱根駅伝が他と一線を画するのは“特殊区間”山区間があるからだ。では、各大学の監督は山上りの特性をどのように見極めているのだろうか【写真は共同】

 神野大地(青山学院大OB、現・セルソース)、柏原竜二(東洋大OB、現・富士通)、今井正人(順天堂大OB、現・トヨタ自動車九州)――。箱根駅伝で記憶に残る選手といえば、箱根最大の難所である往路5区(20.8キロ)をドラマチックに上り抜いた、“山の神”の名前を挙げる人が多いのではないだろうか。スタートから約16キロ先の標高874メートルの地点まで果敢に上り続ける姿は圧巻で、他のコースと比べても特殊な区間であることは間違いない。そんな5区を走れる適性を監督はどのように見極め、どのように選考するのか。柏原に山の特性があると見抜いた、元東洋大監督の川嶋伸次さん(旭化成コーチ)に聞いてみた。

常に山上りが得意なランナーを探している

「上りのフォームや体の特徴、試走させて上りのタイムなどをきちんとデータ化しながら、5区の候補を選ぶ大学もあると思います」と川嶋氏
「上りのフォームや体の特徴、試走させて上りのタイムなどをきちんとデータ化しながら、5区の候補を選ぶ大学もあると思います」と川嶋氏【撮影:小野さやか】

――各大学の監督は、山上りに得意な選手をどのように見つけてくるのでしょう。


川嶋 平地を走る力がある選手なら、山も上れるという見方があり、過去にもエース級の選手を5区に選ぶことはありました。でも、チームの順位を上げるためには、実はエースではない選手を5区に使いたいというのが、監督の本音なんです。各大学の監督は、エースは2区などを走らせたいので、山上りが得意そうな選手を常に探しています。


 今は高校の先生などから、上りやアップダウンに強い選手がいるという情報をもらう監督が多く、上りっぱなしの10キロトレーニングなどを実施する高校の合同合宿を見学するために、山形の蔵王まで足を運ぶ監督も多いですね。


――川嶋さんが東洋大の監督だったとき、高校の頃から上りが強い選手だと分かって柏原選手をスカウトしたのでしょうか。


川嶋 いえ、柏原自身は最初から5区を走りたいと話していましたが、山上りに適性があると分かったのは入学してからです。


 アップダウンがあるだけのコースではなく、実際に長時間、上りっぱなしのコースを走らせないと、山上りの本当の適性は分かりません。ですから、どの大学も上りっぱなしのコースを走らせる山合宿を実施します。東洋大で僕が監督だった頃は、山古志村(現・新潟県長岡市)で上りっぱなしの10キロくらいのコースを1人ずつ走らせて、誰が一番上りの適正があるかを見ていました。


 柏原の場合、高校3年の都道府県駅伝の快走でブレイクし、大学でも1年の時からトラックレースで関東インカレで入賞し、アジアジュニア選手権(5000メートル2位)や、世界ジュニア選手権(10000メートル7位)にも参戦していたので、当初はエース区間の候補でした。でもその年の8月の山合宿での彼の走りを見て、「これは、山もいけるな」と、5区を走らせたいと思いました。


 柏原のような選手はたまにしか出てこないので、各大学ともに、複数の候補を育てるために、上りのトレーニングをさせるケースが多いと思います。極端な例をいえば、トラックの大会には出場させないで、上り専門のランナーとしてトレーニングさせている場合もあるようです。

折山淑美

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。