原点は部員8人でつかんだインハイ優勝 ホッケー瀬川真帆が岩手で知った楽しさ

平野貴也
 2020年東京大会そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第29回は岩手県出身、ホッケーの瀬川真帆(ソニー)を紹介する。

ボールを浮かす“3Dドリブル”が武器

ホッケー女子代表『さくらジャパン』期待の若手である瀬川。快足を生かしたスピーディーなプレーとドリブル能力の高さが際立つ選手だ 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 ライトに照らされた表彰台がまぶしかった。すっかり暗くなったフィールドで、ピンクのユニフォーム、金色のメダル、最高の笑顔が輝いていた。

 8月、ホッケー女子日本代表(愛称:さくらジャパン)が、第18回アジア大会で初優勝を飾った。優勝国に2020年東京五輪の出場権が与えられるため、どの国も本気だ。日本はすでに開催国枠で出場権を得ていたが、世界ランクで上回る3チームを次々に撃破して実力を証明。2年後のメダル獲得に期待の高まる戦いぶりを見せた。

 チームには若手も続々と台頭している。ボールを浮かす“3Dドリブル”で相手をかわし、スピード感のあるアタックで好機を作り出していたのが、社会人4年目のMF瀬川真帆だ。今春に肩と両足の負傷で約2カ月半の離脱を強いられた影響は否めず、まだ調子が上がり切っていないため「自分のプレーには納得していない」と少し悔しそうだったが、守備面の地道なプレスバックを含め、優勝に貢献した。

異国で教わった個人技でさらに飛躍

 持ち味である快足とドリブルは、アジア大会で主将を務めた内藤夏紀(ソニー)も「スピーディーなプレーが持ち味。3Dドリブルが彼女の良いところなので、見てほしい」と認めるところ。個人技は昨年に海外でプレーした経験により、さらに磨かれた。

 瀬川は高校を卒業した2015年にソニーへ入団。1年目で最優秀新人賞を受賞した注目の若手だ。3年目を迎えた昨季はスペイン1部のレアル・ソシエダに期限付きで移籍。当時のチーム最高位となる準優勝に貢献した。

 当地ではアルゼンチン人の監督から、さまざまなシチュエーションを打開する個人技を教わったという。瀬川は持ち返った手応えを下記のように語る。

「自分としては、スペインに行ったのが一番大きなきっかけ。個人技を磨けた。数年前のアルゼンチン代表がすごく好きで、どのポジションからもドリブルを仕掛けられる攻撃的なチーム。見ていて『次は何をするんだろう』と思わされる部分が魅力的でした。実際にアルゼンチン人の監督は、ゴール前などは、日本ではやらないような練習をやっていました」

かつての先輩が語る一流選手の資質

懸命なプレーが瀬川(左)の持ち味。グループリーグの韓国戦では、額を4針縫うケガを負った 【岡本範和】

 アジア大会のグループリーグ首位攻防戦となった中国戦では、3Dドリブルを駆使。「相手はガツガツ(奪いに)来る。一度ボールを浮かせてドリブルをした方が余裕を持てる」と高度な技術でマイボールにすると、ドリブルで中央に何度も切り込むことで相手を密集させ、少し開いた状態で待つFWにラストパスを送って好機を演出した。

 それでも、個人的には動きに納得できないという。

 2カ月半の離脱後、6月の欧州遠征から日本代表に加わったが、7〜8月にイングランドで行われたワールドカップ(W杯)でも本領を発揮することはできず、悔しい思いをしていた。アジア大会でも「70パーセントくらい」というコンディションだった。それでも攻守のアグレッシブさを欠かないのは、彼女の良さだろう。

 グループリーグで対戦した韓国の金寶美(キム・ボミ)は、16年にソニーで共にプレーした先輩だ。試合後、相手のスティックが当たったために額を4針縫うケガをした瀬川を心配していた彼女は「あの子はよく頑張ります。自分が何か足りなかったら、絶対にそれをやり直すという気持ちでやる。いつも一生懸命。その気持ちが見えるからこの子はいいなと思うし、いい精神を持っていると思う」と瀬川が持つ強い責任感と向上心に、一流選手の資質を見いだしていた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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