ジダンとロナウドの魔法が解けたレアル 今季を象徴するクラシコでの大敗

ロペテギが指揮した4カ月間は散々たるものに

レアル・マドリーはメッシをけがで欠くバルセロナに1−5と大敗 【写真:ロイター/アフロ】

 始め方が悪ければ、ろくな終わり方はできない。この使い古された言い回しの通りではある。だが、フレン・ロペテギのレアル・マドリーにおける挑戦が、「エル・クラシコ(伝統の一戦)」の大敗で幕切れを迎えたのは、多くの人にとって予想外だったのではないだろうか。

 2015−16シーズン、ラファエル・ベニテスの指揮下でも、今回とよく似た解任劇があった。解任の決定打となったのは、やはりバルセロナとのクラシコで、当時はけが明けのリオネル・メッシがピッチに登場する前に試合の大勢が決まり、サンティアゴ・ベルナベウで4失点の大敗を喫している。

 だが、2年前のクラシコは0−4というスコアではあったものの、今回ほど両チームの実力差を感じさせるものではなかった。

 今回のクラシコでは、メッシをけがで欠くバルセロナが5−1と大勝を収めた。それは13度の決定機を作り出した末の妥当な結果であり、最終スコアはさらに開いていても不思議ではなかった。逆に後半開始からの25分間だけを見れば、レアル・マドリーもゴールポストをたたいたルカ・モドリッチの決定機をモノにしていれば、2−2に持ち込めていた可能性もあったが、90分間の内容を振り返れば、バルセロナの大勝は妥当な結果だったと言える。

 ロペテギが指揮した約4カ月間は散々たるものだった。結果はもちろん、今のレアル・マドリーはジネディーヌ・ジダンの指揮下で築いてきた盲目なまでの自信を、すっかり失ってしまった印象がある。まるでジダンとクリスティアーノ・ロナウドがかけていた魔法が解けてしまったかのようだ。

数カ月のうちに失った自信と王者の風格

チームはジダンとロナウドのかけた魔法が解けてしまったかのように自信を失っている 【写真:ロイター/アフロ】

 わずか数カ月のうちに、レアル・マドリーは至って平凡なチームに変貌してしまった。他のビッグクラブと同様に質の高い選手をそろえてはいる。だがジョゼ・モウリーニョ時代に染み付いたイメージをカルロ・アンチェロッティが取り払って以降、他のライバルに示してきた王者の風格は感じられなくなった。

 アンチェロッティはロッカールームの和を取り戻しつつ、自分たちの能力を信じてボールを丁寧に扱うスタイルを少しずつ浸透させていった。その試みは短命に終わったベニテスの指揮下で失われかけたが、ジダンの手で完成形を見るに至った。

 だが、キエフのチャンピオンズリーグ(CL)決勝でリバプールを破り、周囲がデシモテルセラ(13冠目)の幸福に満たされる傍ら、ロッカールームではC・ロナウドが退団の意思を伝え、その数日後にはジダンも一方的に退任を決めた。

 この事態を受け、フロレンティーノ・ペレス会長は複数の監督にオファーを断られた末、スペイン代表のワールドカップ・ロシア大会初戦が3日後に迫っていたタイミングでロペテギとの契約を公表し、周知の解任騒動を引き起こした。

 さらにはCL3連覇の立役者の1人であるケイロル・ナバスが健在のGKに、ティボー・クルトワを連れて来るような不可解な補強を行う反面、C・ロナウドの穴を埋める人材を獲得することはできなかった。

 昨季と変わらずトップレベルの選手をそろえながら、レアル・マドリーは負のスパイラルから抜け出せずにいる。クラシコの大敗後にはカゼミーロが「この結果は今季のチームを象徴している」と話していた。

 ロペテギの後任には暫定処置として、Bチームの位置付けにあたるレアル・マドリー・カスティージャを率いていたサンティアゴ・ソラーリが就任したが、クラブはジダンやロペテギとは全く異なるタイプのアントニオ・コンテを招へいすべく、現在も交渉を続けている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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