「継続」のA東京と千葉、再起を期す栃木 B1リーグ開幕プレビュー 東地区編

大島和人

A東京は「より素晴らしく」期待以上の仕上がりに

9月上旬に行われたアーリーカップ関東を制したA東京。昨季王者は「不変」だ 【(C)B.LEAGUE】

 東地区はB1の強豪がひしめく激戦区だ。

 2017−18シーズンのファイナルを戦ったのは、アルバルク東京と千葉ジェッツだった。2016−17シーズンを制したB1の初代チャンピオンも、同地区の栃木ブレックスだ。今季は強豪・川崎ブレイブサンダースが中地区にスライドしたが、それでも陣容の濃さに違いはない。

 昨季の王者、A東京は「不変」だ。ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチ(HC)は2季目で、外国籍選手が1名入れ替わったものの、残る選手は全員が契約を更新した。

 唯一の新加入選手、ミルコ・ビエリツァは34歳のベテランで、新人時代はセルビアのクラブでパヴィチェヴィッチHCのチームメートだった。インサイドとして、タフかつクレバーに動き、3ポイントシュートも打てるタイプ。アレックス・カークとともにインサイドの軸となる。

 今季はルールの変更により、外国籍選手の「全員フル出場」が許される一方で、ベンチ入りが3名から2名に減った。そこは帰化選手がいないA東京にとって、多少の不安要素かもしれない。しかしそれも他チームから見れば贅沢な悩みで、インサイドには日本代表の竹内譲次も健在だ。33歳のベテランは昨季、目覚ましい成長を遂げ、ワールドカップ予選でも大活躍を見せていた。

 他にもエースの田中大貴、抜群の守備力を誇る菊地祥平と人材は豊富。加入2季目となる馬場雄大、安藤誓哉、小島元基といった若手ののびしろも魅力だ。

 正中岳城キャプテンが「まだまだやれることはたくさんある」と強調するように、チーム作りは良い意味でまだ途上。ただし、9月上旬に行われたアーリーカップ関東では、代表で3名(竹内、田中、馬場)を欠く構成ながら、優勝を飾っている。素晴らしいチームが「より素晴らしく」なることで、昨季以上の戦いを期待できるはずだ。

選手層はリーグ最高、エース・富樫は封じられない!?

千葉のエース・富樫の封じ方については、どのクラブも苦労しているようだ 【(C)B.LEAGUE】

 千葉も3季目を迎える大野篤史HCの下、「継続」のシーズンになる。昨季はMVP級の活躍を見せたセンターのギャビン・エドワーズ、3ポイントシュートとポストプレーの名手であるスモールフォワード(SF)小野龍猛主将が引き続いてチームの軸だ。

 選手層の厚みはおそらくリーグ最高。シューティングガード(SG)は元から人材豊富だったが、今季は秋田のエースだった名シューター田口成浩が加わっている。

 インサイドは帰化選手のマイケル・パーカーが健在で、経験豊富なパワーフォワード(PF)の大宮宏正が新たに加入した。陣容のバランスがよく、アウトサイドに外国籍選手を起用する余裕もある。トレイ・ジョーンズはハンドリングが巧みで、見ていて楽しいウイングプレイヤー。エドワーズに次ぐ「2人目の外国籍選手」については、彼とPFのジョシュ・ダンカンを、相手やチーム状況に応じて使い分けることになるだろう。

 エースはもちろん、日本代表ポイントガード(PG)の富樫勇樹だ。167センチの小兵だが、米国の高校に留学した彼は英語も堪能で、外国出身選手との連係から相手守備のズレを作る「ピック&ロール」のプレーが抜群。2人で対応するとパスをさばかれ、詰めると逆を取られ、距離を空けると高確率の3ポイントシュートがある――。そんな富樫の封じ方には、どのチームも苦しんでいる。

悔しい結果に終わった昨季、「不変」のスタイルを貫く

再起を期す栃木は、変わらないスタイルで優勝争いに絡めるか 【(C)B.LEAGUE】

 栃木は悔しい結果に終わった昨シーズンから、再起を期すシーズンだ。16−17シーズンの終了後にトーマス・ウィスマンHCが退任し、古川孝敏(琉球ゴールデンキングス)、須田侑太郎(琉球)、熊谷尚也(大阪エヴェッサ)らも移籍。昨シーズンは序盤戦でつまずき、東地区4位からワイルドカードでチャンピオンシップに進出したものの、1回戦でシーホース三河に屈している。

 キャプテンの田臥勇太が「しっかり全員で守って、リバウンドを全員で頑張って、ルーズボールも負けないようにして走って、オフェンスにつなげるというスタイルは変わらない。その質、強度を高くしてやっていく」と口にするように、スタイルは不変だ。安齋竜三HCは昨季途中の就任だが、選手やアシスタントコーチとして栃木に長く在籍しており、そのスタイル、メンタリティーを熟知している。

 センターのライアン・ロシターは田臥とともにチームを引っ張るリーダーで、能力的にもB1の外国籍選手の中ではトップクラス。ジェフ・ギブスはアキレス腱断裂も完全に癒え、今季は開幕から本来の姿を見せてくれるだろう。

 他にも竹内公輔は日本人最高レベルのインサイドプレイヤーで、ロシター、ギブスと3人で回すローテーションは鉄板。田臥、遠藤祐亮、鵤誠司、渡邉裕規のガード陣も極めてレベルが高い。名シューター喜多川修平の負傷は痛手だが、やや薄かったSFのポジションには川崎ブレイブサンダーズの名脇役だった栗原貴宏が加わっている。栃木も優勝争いに絡む可能性のあるチームだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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