猛暑と多くの喧騒と、新たなスターの誕生 フローラン・ダバディの全米OPダイアリー
「大坂なおみ」という新たなスターが誕生した2018年の全米オープン。フローラン・ダバディ氏が、さまざまな大会エピソードを振り返った 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
大会中継番組のナビゲーターとして現地取材をしたフローラン・ダバディ氏が、そのひとつひとつを振り返った。(本文中の日付はすべて現地時間)
猛暑で始まった全米50周年大会
8月25日 今年はオープン化以来の50周年記念大会。1978年まで会場だった伝説のフォレスト・ヒルズを訪れる。ジミー・コナーズ(米国)とビヨン・ボルグ(スウェーデン)が決勝で戦った古代ローマのような石のアリーナ、旧センターコートの真ん中に立つ。テニス史に残るアーサー・アッシュ、スタン・スミス(ともに米国)の写真も飾られている。
8月27日 大会開幕。暑い。とにかく暑い。優勝が近づく2週目に照準を合わせるトップ選手にとって、こんな1週目を乗り越えることは簡単ではない。シーズン最後のグランドスラムなだけに疲労困憊(こんぱい)の選手たちは本当にかわいそう。生き残りを懸けた戦いが始まる。
新しくなったルイ・アームストロング・スタジアムのすぐ近くには、数々の電車が通っている 【Getty Images】
新しくなったルイ・アームストロング・スタジアムでは、木造のブラインドが日暮れごろに美しく西日を通す。米国建築のフロンティア・スピリットを体現するデザインはかっこいいけれど、会場近くを通る数々の電車や上空の飛行機、隣のフード・コートの雑音を大きくするようだ。集中できない女子のシードたちが次々と敗れる。青い海に漂流するシモナ・ハレプ(ルーマニア)、キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)、ガルビネ・ムグルサ(スペイン)が序盤から次々と暗礁に乗り上げた。彼女たちとは、ここでさようならだ。
8月31日 期待のナイト・セッションにウィリアムズ姉妹が登場するが、姉妹対決はセリーナの圧勝に終わる。セリーナの24個目のグランドスラムへの道はお姉さんのビーナスが邪魔するにはいかない。暗黙の了解。一方、ロシアの秘密機械カレン・カチャノフがラファエル・ナダル(スペイン)を追い詰める。膝が痛いラファにとって、猛暑の中の苦しい勝ち上がりだ。