猛暑と多くの喧騒と、新たなスターの誕生 フローラン・ダバディの全米OPダイアリー

フローラン・ダバディ

「大坂なおみ」という新たなスターが誕生した2018年の全米オープン。フローラン・ダバディ氏が、さまざまな大会エピソードを振り返った 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 猛暑、新しくなったルイ・アームストロング・スタジアム、そして新女王・大坂なおみの誕生。女子決勝での“出来事”はいまだに話題を呼んでいるが、ほかにもさまざまなエピソードが2018年全米オープンテニスを彩っていった。
 大会中継番組のナビゲーターとして現地取材をしたフローラン・ダバディ氏が、そのひとつひとつを振り返った。(本文中の日付はすべて現地時間)

猛暑で始まった全米50周年大会

8月23日 ニューヨークのJFK空港からイエローキャブに乗り、マンハッタンに向かうとスカイラインのど真ん中に堂々と立つエンパイア・ステート・ビルが現れる。ニューヨークは他の3大大会と全く違うパワー・スポットだ。街のエネルギーが会場まで溢れ出る。

8月25日 今年はオープン化以来の50周年記念大会。1978年まで会場だった伝説のフォレスト・ヒルズを訪れる。ジミー・コナーズ(米国)とビヨン・ボルグ(スウェーデン)が決勝で戦った古代ローマのような石のアリーナ、旧センターコートの真ん中に立つ。テニス史に残るアーサー・アッシュ、スタン・スミス(ともに米国)の写真も飾られている。

8月27日 大会開幕。暑い。とにかく暑い。優勝が近づく2週目に照準を合わせるトップ選手にとって、こんな1週目を乗り越えることは簡単ではない。シーズン最後のグランドスラムなだけに疲労困憊(こんぱい)の選手たちは本当にかわいそう。生き残りを懸けた戦いが始まる。

新しくなったルイ・アームストロング・スタジアムのすぐ近くには、数々の電車が通っている 【Getty Images】

8月30日 大会4日目。錦織はくせ者ガエル・モンフィス(フランス)を難なく破る。
 新しくなったルイ・アームストロング・スタジアムでは、木造のブラインドが日暮れごろに美しく西日を通す。米国建築のフロンティア・スピリットを体現するデザインはかっこいいけれど、会場近くを通る数々の電車や上空の飛行機、隣のフード・コートの雑音を大きくするようだ。集中できない女子のシードたちが次々と敗れる。青い海に漂流するシモナ・ハレプ(ルーマニア)、キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)、ガルビネ・ムグルサ(スペイン)が序盤から次々と暗礁に乗り上げた。彼女たちとは、ここでさようならだ。

8月31日 期待のナイト・セッションにウィリアムズ姉妹が登場するが、姉妹対決はセリーナの圧勝に終わる。セリーナの24個目のグランドスラムへの道はお姉さんのビーナスが邪魔するにはいかない。暗黙の了解。一方、ロシアの秘密機械カレン・カチャノフがラファエル・ナダル(スペイン)を追い詰める。膝が痛いラファにとって、猛暑の中の苦しい勝ち上がりだ。

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著者プロフィール

1974年パリ生まれ。パリのINALCO(国立東洋言語文化学院)日本語学科で日本語の学位取得。1998年に来日し映画雑誌『プレミア』の編集に関わる。99年から02年までサッカー元日本代表トルシエ監督の通訳・アシスタントを務める。現在はテニス番組のナビゲーター(WOWOW)や、フランス大使館のスポーツ/文化イベントの制作に関わるなどで活躍。言語はフランス語、英語、日本語(イタリア語、スペイン語 会話)

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