6分36秒でロベカルが残したインパクト  「レジェンド参戦」を次につなげるために

北健一郎

“悪魔の左足”がFリーグに参戦

3度のW杯出場経験を持ち、優勝も果たした“ロベカル”が現役復帰 【写真は共同】

 まさしく、ロベカル・フィーバーだった。日本フットサルリーグ、Fリーグに特別参戦した“ロベカル”ことロベルト・カルロスは、強烈なインパクトを残した。

 ブラジル代表としてワールドカップ(W杯)に3回出場し、2002年の日韓大会では世界一に貢献した。クラブレベルでは、「銀河系軍団」と呼ばれたレアル・マドリーで、不動の左サイドバックとして君臨。時速144キロとされるシュートに、ついた異名は“悪魔の左足”だ。

 12年に引退してピッチを離れていた男が、6年ぶりに現役復帰する――。そんなニュースが日本中を駆け巡ったのは8月17日。9月8日、9日に行われるFリーグの共同開催、大阪ラウンドに選手として出場することになったのだ。

 そもそも、なぜFリーグはロベルト・カルロスを呼んだのだろうか? そこには大きく分けて3つの理由がある。その1つ目が集客だ。“ロベカル・プロジェクト”の仕掛け人である、Fリーグの小倉純二COOが明かす。

「Fリーグでは開幕の時や、プレーオフの時は盛り上がりますが、どうしても中だるみしてしまうところがありました。こういう時期に何かイベントや、プロモーションができないかと考えていました」

 Fリーグは12クラブによる3回戦総当たりで、リーグ戦上位3チームがプレーオフに進出し、王者を決める。シーズンは例年、6月から翌年2月まで。8カ月の長丁場で、どうしてもシーズン中盤は話題も少なく、集客も苦戦しがちだ。

 しかも、大阪セントラルの試合会場となる丸善インテックアリーナ(大阪市中央体育館)の収容人数は約1万人。Fリーグとしては、集客の目玉になるような話題が欲しかったのだろう。

代表の強化とフットサルW杯招致の側面

ロベカルの招へいには、集客だけではない代表強化の側面も 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 ロベカル招へいの理由について、2つ目は強化における側面だ。

 ロベカルが参加したFリーグ選抜は、各クラブに所属する23歳以下の若い選手によって構成されたチームだ。20年以降の日本代表を強化するという目的で、所属クラブでは出場機会に恵まれないが、将来性がある選手たちをセレクトした。

 無名の若者を集めても勝てるとは思えない――。開幕前はそんな予想が大半を占めていたが、第1クールで早くも3勝を挙げて、現在8位と台風の目になっている。8月には日本代表候補合宿に呼ばれる選手も現れた。

 日本の将来を背負うであろう選手たちに、フットサル大国の技術と、勝者のメンタリティーを伝える。45歳のロベカルと平均年齢20歳前後のチームという異色の組み合わせには、レジェンドと若手の化学反応を起こす狙いもあった。

「公式戦に出場することについては、いろいろな議論がありました。ロベルト・カルロスさんのような選手が、若い選手の中に入って、どういう効果があるか試してみようと思いました」(小倉COO)

 そして3つ目がフットサルW杯の招致だ。

 日本は20年に行われるフットサルW杯の開催地に立候補している。日本の他に手を挙げているのはイラン、コスタリカ、リトアニア、ニュージーランド。10月27日に行われるFIFA(国際サッカー連盟)理事会で決まる見込みだ。

 小倉COOによれば、FIFAから立候補国に対して、招致活動はしないように、と言われている。それでも、世界的レジェンドをFリーグが呼んだとなれば、国内外にニュースが発信されるはずだ。ロベカル招へいは、残り少ない期間でW杯招致の確率を高めるための策でもあった。

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著者プロフィール

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経てフリーライターに。2005年から2009年まで『ストライカーDX』編集部に在籍し、2009年3月より独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。主な著書に「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」(ガイドワークス)などがある。

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