6分36秒でロベカルが残したインパクト 「レジェンド参戦」を次につなげるために
スーパースターの真骨頂を見せた2ゴール
2ゴールで真骨頂を見せたロベカル。結果を残し、チームの勝利に貢献 【写真は共同】
現役時代よりも明らかに丸くなった体は重そうで、左サイドを弾丸のように駆け上がった往年のスピードは感じられない。足元に来たパスをトラップミスしてこぼすイージーミスをする場面もあった。ロベカル、大丈夫なのか――。会場が微妙な空気に包まれた。しかし、ブラジル代表とレアル・マドリーで世界一を経験した男は、やはり役者が違った。
前半15分、左サイドの奥で齋藤日向からの浮き球を胸でコントロール。前に詰めてきたGKの動きを見極めて、左足のインサイドでシュートを放つ。“天使の左足”と呼びたくなる優しいシュートは、GKの股を抜けてゴールネットを揺らした。続く17分には、右45度の位置からFKのチャンスが訪れた。GKの正面に飛んだものの、代名詞でもある左足のシュートで会場を沸かせた。
その後、ロベカルの出番はなく、前半残り1秒で追いつかれ、同点で試合を折り返した。後半も、コンビネーションに不安のあるロベカルには、なかなか出番が巡ってこないまま時間が経過していく。
後半に入って再びピッチに立ったのは29分。その1分後、カウンターから中央を持ち上がったロベカルは、自分の背後から相手が詰めてきたタイミングで、左サイドの北野聖夜にパス。これを受けた北野が相手を引きつけて中央にリターンすると、ジャンプしながらダイレクトで合わせたのはロベカル。利き足とは逆の右足にもかかわらず、浮き球を正確にミートしたファインゴールだった。
ロベカルがピッチに立っていたのは6分36秒間。そのうち、放ったシュートは3本。その中で2ゴールという圧倒的な結果を出して、チームに2−1の勝利をもたらした。
重要なのは「盛り上がり」を集客へつなげること
12年には、三浦知良がエスポラーダ北海道の一員としてFリーグに1試合限定で出場 【写真は共同】
「昨日(エキシビションマッチ)はお遊びの要素があったのですが、今日は強度も高い、集中力も高い、モチベーションも高いゲームだった。その中でゴールを決められたので、幸せでいっぱいです」
45歳でのゴールはFリーグ最年長記録。ロベルト・カルロスは、文字通りFリーグの歴史にその名を刻んだ。Fリーグ選抜で共に戦った高橋優介監督の言葉は興味深い。
「決して動きが速いわけではなかったのですが、それでもやれることをしっかりと見極めながらやった結果、ゴールを取ってしまう。そのメンタル的な部分の持ち方が、すさまじいなと感じました」
小倉COOも称賛を惜しまない。
「若い選手の中に入って試合をしてもらいたい、と伝えて『やる』という答えが返ってきた時には驚きました。普通はノーでしょう。でも、こういう結果を出してしまうんですから、本当にすごいとしか言いようがありません」
ロベカル効果は数字にも現れた。ロベカルが参戦したFリーグを2日間にわたって生放送したインターネットテレビ局の「AbemaTV」によれば、試合の視聴数、コメント数は共にFリーグ放送の過去最高記録をたたき出した。もちろん、大事なのはロベカル・フィーバーを次につなげることだ。今回でフットサルに興味を持ったお客さんを、どのようにしてFリーグに呼び込むのか。それこそが最重要テーマになる。
フットサル界には「レジェンド参戦」の前例がある。12年1月、日本サッカー界のレジェンド・三浦知良(横浜FC)が、エスポラーダ北海道の一員としてFリーグに1試合限定で出場した。チケットは前売りでソールドアウト。ホーム戦では、1試合の動員としては最多となる5368人を集めた。カズの参戦はスポーツ新聞の一面を飾り、テレビなどマスメディアでも大々的に取り上げられた。
カズを呼んだ後のFリーグはどうなったか。一時的に集客を伸ばしたものの、その後は停滞してしまっている。Fリーグに求められるのは、カズやロベカルの力に頼らなくても、自分たちで盛り上げられるよう成長していくこと。この熱を無駄にしてはいけない。