6分36秒でロベカルが残したインパクト  「レジェンド参戦」を次につなげるために

北健一郎

スーパースターの真骨頂を見せた2ゴール

2ゴールで真骨頂を見せたロベカル。結果を残し、チームの勝利に貢献 【写真は共同】

 9月9月、ロベルト・カルロスはFリーグ選抜の一員としてヴォスクオーレ仙台との公式戦に臨んだ。ロベカルが初めてFリーグのピッチに立ったのは4分49秒。大声援を浴びてピッチに立ったものの、最初の出番では大きなインパクトは残せなかった。

 現役時代よりも明らかに丸くなった体は重そうで、左サイドを弾丸のように駆け上がった往年のスピードは感じられない。足元に来たパスをトラップミスしてこぼすイージーミスをする場面もあった。ロベカル、大丈夫なのか――。会場が微妙な空気に包まれた。しかし、ブラジル代表とレアル・マドリーで世界一を経験した男は、やはり役者が違った。

 前半15分、左サイドの奥で齋藤日向からの浮き球を胸でコントロール。前に詰めてきたGKの動きを見極めて、左足のインサイドでシュートを放つ。“天使の左足”と呼びたくなる優しいシュートは、GKの股を抜けてゴールネットを揺らした。続く17分には、右45度の位置からFKのチャンスが訪れた。GKの正面に飛んだものの、代名詞でもある左足のシュートで会場を沸かせた。

 その後、ロベカルの出番はなく、前半残り1秒で追いつかれ、同点で試合を折り返した。後半も、コンビネーションに不安のあるロベカルには、なかなか出番が巡ってこないまま時間が経過していく。

 後半に入って再びピッチに立ったのは29分。その1分後、カウンターから中央を持ち上がったロベカルは、自分の背後から相手が詰めてきたタイミングで、左サイドの北野聖夜にパス。これを受けた北野が相手を引きつけて中央にリターンすると、ジャンプしながらダイレクトで合わせたのはロベカル。利き足とは逆の右足にもかかわらず、浮き球を正確にミートしたファインゴールだった。

 ロベカルがピッチに立っていたのは6分36秒間。そのうち、放ったシュートは3本。その中で2ゴールという圧倒的な結果を出して、チームに2−1の勝利をもたらした。

重要なのは「盛り上がり」を集客へつなげること

12年には、三浦知良がエスポラーダ北海道の一員としてFリーグに1試合限定で出場 【写真は共同】

 試合後、ロベカルは満足そうな表情を浮かべた。

「昨日(エキシビションマッチ)はお遊びの要素があったのですが、今日は強度も高い、集中力も高い、モチベーションも高いゲームだった。その中でゴールを決められたので、幸せでいっぱいです」

 45歳でのゴールはFリーグ最年長記録。ロベルト・カルロスは、文字通りFリーグの歴史にその名を刻んだ。Fリーグ選抜で共に戦った高橋優介監督の言葉は興味深い。

「決して動きが速いわけではなかったのですが、それでもやれることをしっかりと見極めながらやった結果、ゴールを取ってしまう。そのメンタル的な部分の持ち方が、すさまじいなと感じました」

 小倉COOも称賛を惜しまない。

「若い選手の中に入って試合をしてもらいたい、と伝えて『やる』という答えが返ってきた時には驚きました。普通はノーでしょう。でも、こういう結果を出してしまうんですから、本当にすごいとしか言いようがありません」

 ロベカル効果は数字にも現れた。ロベカルが参戦したFリーグを2日間にわたって生放送したインターネットテレビ局の「AbemaTV」によれば、試合の視聴数、コメント数は共にFリーグ放送の過去最高記録をたたき出した。もちろん、大事なのはロベカル・フィーバーを次につなげることだ。今回でフットサルに興味を持ったお客さんを、どのようにしてFリーグに呼び込むのか。それこそが最重要テーマになる。

 フットサル界には「レジェンド参戦」の前例がある。12年1月、日本サッカー界のレジェンド・三浦知良(横浜FC)が、エスポラーダ北海道の一員としてFリーグに1試合限定で出場した。チケットは前売りでソールドアウト。ホーム戦では、1試合の動員としては最多となる5368人を集めた。カズの参戦はスポーツ新聞の一面を飾り、テレビなどマスメディアでも大々的に取り上げられた。

 カズを呼んだ後のFリーグはどうなったか。一時的に集客を伸ばしたものの、その後は停滞してしまっている。Fリーグに求められるのは、カズやロベカルの力に頼らなくても、自分たちで盛り上げられるよう成長していくこと。この熱を無駄にしてはいけない。

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著者プロフィール

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経てフリーライターに。2005年から2009年まで『ストライカーDX』編集部に在籍し、2009年3月より独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。主な著書に「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」(ガイドワークス)などがある。

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