VARがなかったら、16強は違っていた?
GLではポジティブに作用、反則の抑止にも

W杯の主役となったVAR

W杯ロシア大会、ここまで最も目立っているのはVARだ
W杯ロシア大会、ここまで最も目立っているのはVARだ【写真:ロイター/アフロ】

 ワールドカップ(W杯)ロシア大会は、32チームによるグループリーグ(GL)を28日(現地時間、以下同)に終え、30日からは決勝トーナメントが始まる。ここまで最も目立っているのは、クリスティアーノ・ロナウドでも、リオネル・メッシでも、ネイマールでも、ハリー・ケインでもない。


 VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)だ。


 今大会から初めて導入されたVARを簡単に説明すると、試合中に審判が必要と判断した場合に、リプレー映像を見た上で判定を行うというもの。ただし、適用されるのは(1)ゴールやゴール直前のプレー、(2)PK、(3)一発退場、(4)審判による選手誤認の4つの場面に限られる。


 国際映像では、試合前に審判団の紹介の後に、VARのオペレーションルームが映し出される。実際の試合会場にいる4人の審判と、オペレーションルームはヘッドセットで連絡を取り合う。審判側から要求するだけでなく、オペレーション側からも連絡をとれる。


 誤審と思われるプレーがあった場合は、オペレーションルームが主審に連絡をする。主審はそれを受け入れるか、ピッチの外に設置されたモニターで見てから判定をする。まさしく“5人目のレフェリー”だ。


 29日には、FIFA(国際サッカー連盟)がVARについてのメディアブリーフィングを行った。グループリーグ48試合で計335件(1試合平均約6・9件)のプレーがチェック対象となり、うち17件でVARによる映像の見直しを実施。14件で判定が変更されたことが明らかにされた。また、主審の判定はVARがなくても95%が正確なものだったが、VARの導入で99.3%にまで上がったという。

ポルトガルvs.スペインで初のVAR判定

今大会初のVARによるPK判定はフランスvs.オーストラリアで行われた
今大会初のVARによるPK判定はフランスvs.オーストラリアで行われた【写真:Shutterstock/アフロ】

 VARによる判定が初めて下されたのは、6月15日に行われたグループBの第1節、ポルトガルvs.スペインだった。前半24分、スペインのジエゴ・コスタがゴールを決めた後、ジャンルカ・ロッキ主審はシュート直前のポルトガルDFペペとの接触シーンについてVAR判定を求めた。補助審判が映像を確認した結果、そのままゴールが認められた。


 筆者が実際に目撃したのは、その翌日、カザンで行われたグループCのフランスvs.オーストラリアだった。0−0で迎えた後半13分、フランスFWのアントワーヌ・グリーズマンがペナルティーエリア内で倒されるも主審は笛を吹かず、プレーが続いた。しかし、VAR判定の結果、フランスにPKが与えられ、今大会初のVARによるPK判定となった。


 今大会ではグループリーグ終了時点で24回のPKがあった(失敗も含む)。すでにW杯史上最多となっており、決勝トーナメント以降も増えるのは確実だ。24回のうちVAR判定によって与えられたのは7回。一方で、主審はPKと判定したものの、VARによる見直しの結果、取り消された例も2件あった。VARがなければPKの回数は約3分の2になっていた可能性が高い。


 サッカーは大量得点が生まれる試合もあるが、基本的にはロースコアの試合が多い。1点の占めるウエートは他のスポーツと比較しても大きく、PKは試合の勝敗に直結する。だから、考えてみた。「もしもVARがなかったら、今大会の勝ち上がりはどうなっていたのか?」と――。

日本が勝ち上がったのはVARのおかげ?

コロンビアとの最終戦、セネガルはマネが倒されてPKを得た……かと思われたが、VAR判定によって取り消しに
コロンビアとの最終戦、セネガルはマネが倒されてPKを得た……かと思われたが、VAR判定によって取り消しに【写真:ロイター/アフロ】

 VARに泣いたといえば、日本と同組のセネガルだろう。28日のコロンビアとの最終戦、セネガルは前半17分にサディオ・マネが倒されてPKを得た……かと思われたが、VAR判定によって取り消しに。後半29分にコロンビアに先制されると、ゴールを目指すも1点が遠く、0−1で敗れた。


 このVAR判定は同時刻に行われていた日本vs.ポーランドにも影響を与えている。日本はポーランドに敗れたとしても、コロンビアがセネガルに勝てば、勝ち点、得失点差、総得点でも同数のため、そのまま警告数が変わらなければフェアプレーポイントによってセネガルをかわして決勝トーナメントに勝ち上がれる状況だった。


 ポーランドに先制されて1点ビハインドだった日本は、コロンビアがリードしているという情報を得ると、残り10分ほどはボールを回して0−1のまま試合を終わらせる戦い方を選ぶ。もしもセネガルが同点ゴールを決めれば、その時点で順位が入れ替わるリスクもあったが、結果的には2試合共にスコアは動かずタイムアップ。


 ただ、前半の時点でマネのPKが認められ、セネガルが先制していたら、全く違った展開になっていたのは間違いない。それこそ、日本がベスト16に勝ち上がれないという状況も十分に考えられた。

北健一郎

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経てフリーライターに。2005年から2009年まで『ストライカーDX』編集部に在籍し、2009年3月より独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。主な著書に「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」(ガイドワークス)などがある。

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