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U−21からA代表が現実的な目標に
アジア大会でアピールに成功した選手たち

インドネシアでのA代表メンバー発表会見

FW岩崎はA代表のメンバー発表を受け「同い年の選手が選ばれて、ものすごく刺激になりました」と語った
FW岩崎はA代表のメンバー発表を受け「同い年の選手が選ばれて、ものすごく刺激になりました」と語った【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

「こんな不思議な経験もないな」


 そんな感慨を覚えたのは、8月30日のこと。日本時間の13時から行われたのは日本代表メンバー発表記者会見である。9月7日の試合(チリ戦)に向けた発表だからタイミングとしてはおかしくない。だが、その会場がインドネシアのホテルだったとなると、異例というほかなかった。


 森保一は兼任監督である。2年後の東京五輪を目指すU−21日本代表と4年後のワールドカップ・カタール大会を目指すA代表の指揮を同時に執っている。このため、まさにアジア競技大会を戦っていて、決勝戦の前々日というタイミングで、A代表のメンバー発表を行う奇妙な状況が生まれていた。


 この不思議なシチュエーションは、U−21代表の選手たちを大いに刺激していた。「自分たちの監督がA代表の監督でもある。こんなチャンスはない」(DF板倉滉)からである。A代表は全員が目標として描く場。そこの指揮官が自分たちの指揮をも執っている。その事実を再確認する機会となった。


「(発表は)すごく(選手の間で)話題になりました。ここでのプレーがA代表につながっていくのは間違いないと思えた」(FW岩崎悠人)


 選手サイドがこういう感覚を持てるのは、まさに兼任監督ならではのことだろう。とりわけ彼らを刺激したのはメンバーリストに東京五輪世代の選手たちが3人名を連ねていたことだ。


「(堂安)律とかトミ(冨安健洋)とか、同い年の選手が選ばれて、ものすごく刺激になりました」(岩崎)


「一緒にやった選手が入っているので、負けたくない気持ちが強いですし、『早くA代表に入りたい』という気持ちがさらに強くなった」(板倉)

東京五輪世代が受けた刺激

兼任監督という特殊な状況が、選手たちの目指す舞台を明確にさせた
兼任監督という特殊な状況が、選手たちの目指す舞台を明確にさせた【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 今回選ばれた選手たちの力はよく知っていて、認めている。「律はいつも自分の先を行ってくれる」(岩崎)。そしてだからこそ、A代表が雲の上の存在ではないという意識を持つこともできる。


「意識するといったらまだまだ自分の足りないところが多すぎます」としたDF原輝綺もまた、「でもいつか自分も」と感情のこもった口調で語っていたのは印象的だった。


 アンダーエイジの日本代表は、どうしても一緒に活動している同年代の中での自分の立場を意識してしまう面がある。ただ、兼任監督という特殊な状況が、自分たちの目指す舞台があくまでA代表なのだという意識付けを自然と可能にしていた。


 森保監督は決勝前日、A代表のメンバー発表に選手たちが刺激を受けていた様子を聞かされると、こう答えた。


「『なぜ自分たちは選ばれないんだ』と、思ってもらいたいです。その雰囲気、ギラギラしたものを出してほしい。今回は選んでいないですけれど、彼らにはそのチャンスが十分にある。自分の可能性をより高めて力を示してほしいし、チャレンジし続けられること、まだまだ伸びしろがあることを見せてくれれば、次のチャンスは必ず待っている」


 あらためて今後の招集に含みを残しつつ、選手たちがU−21代表という枠組みに選ばれることだけで満足せず、上を狙う雰囲気を出していることを素直に喜んでいた。


 同時に「心情的には全員選んであげたい」とも語っていたのだが、森保監督はそうは言いつつも、感情を優先しない冷徹な指揮官である。「使える」と思えなければ、当然選ばないだろう。では、アジア大会を戦い抜いた中に、A代表で「使える」と感じさせた選手はいたのだろうか。

川端暁彦
川端暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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