長崎・高田社長が語る“金J”の魅力  「今までなかったのが不思議なくらい」

スポーツナビ

長崎の高田社長に金曜日にJリーグがあるという新しいライフスタイルについて話を聞いた 【(C)J.LEAGUE】

 サッカークラブの経営に携わって1年あまり。アウェーで相手チームのサポーターと交流を図れば、あっという間に人垣ができる。V・ファーレン長崎の高田明社長は今、Jリーグでも抜群の知名度を誇る存在だろう。その高田社長に、金曜日にJリーグがある、その新しいライフスタイルについてうかがった。

 長崎では初めての開催となるフライデーナイトJリーグ。理想を語ることはこんなにも活力があるものなのか。理想が原動力になる。高田社長が笑顔で次々とアイデアを語る姿は、お客さんに楽しんでもらいたい、ということそのものを楽しんでいるように映った。(取材日:8月19日)

Jリーグの魅力は「スポーツの夢」を感じられること

高田社長はJリーグを「もっともっとたくさんの方に見てもらいたい」と訴える 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

――高田社長が感じるJリーグの魅力は何ですか?

 生で試合を見るというのは、見れば見るほどエキサイティングですね。サッカーの面白さも分かってくるし、もっともっとたくさんの方々に、プロ野球を超えるくらいに見ていただきたいという思いが日々、強くなっています。

 スポーツはいいですよ。すべてを忘れて、笑顔になれるし、涙を流すこともできる。サポーター、ファンの方々のそういう姿を見たときに、スポーツの夢というのはそういうところだなと感じています。

――長崎のここまでの戦いぶりをどう見ていますか?

 今季の戦いを見ていけば、中断期間明けはほとんど上位チームとの対戦ばかりでした。ここからは前半戦で勝ったチームとの対戦も多くあります。FC東京さんに勝たせていただいて(第18節/1−0)、浦和さんと引き分け(第20節/0−0)。勝ち点を取れたのはそれだけで、あとは負けてしまいました。内容では本当に1点に泣いていることが多くて、勝ってもおかしくなかった試合もありました。

 なので、中身としては悲観していません。「結果だぞ」という声もSNSなどではよく聞かれますが、中身を見て、選手も監督もわれわれも一緒に戦っているので、残り試合に関しては、私はかなり期待をしています。勝ち負けは分かりません。でも、精いっぱいやっていけば、結果もついてくると信じて、選手や監督には残り試合も頑張ってほしいと思っています。ブレずに応援し続けたいというのが、正直な思いです。

 私は理想ばかりだと言われますが、ヨーロッパのあるリーグでは3部に落ちてもお客さんがほとんど減らなかったチームがありました。(目指すのは)まさしく、それなんですよね。負けても応援する。それが理想です。でも、まだそこまでは至っていない。今は負けが続いてきたら、マスコミに取り上げられる回数も少なくなる。そうすると普及しないというジレンマがあるのは確かです。

――高田社長にとって推しメンの選手はいますか?

 得点を挙げている選手といったら(鈴木)武蔵くん、(中村)慶太くんですよね。でも、出ている選手は全員、応援してほしいと思っています。ただ、注目は(ヨルディ・)バイスさんですね。彼は今までのチームにはなかったキャラクターを持っていて、リーダーシップがあります。これは長崎には欠けていたところかもしれません。彼が声を出してリーダーシップを発揮してくれることで、チームは変わってきたと思います。

 あとはハイロ(・モリージャス)さんがまだ、試合に出ることができていないので、そこにも期待ですね。武蔵くんや慶太くんには2ケタ得点を目指して、将来的には日本代表に選ばれるような選手になってほしいと思っています。今年、初めてJ1に挑戦するという中で、それぞれの選手が力を付けてきていると思います。他のチームと比べても、決して見劣りするような選手層ではないと思います。一人ひとりを見ても、これからが楽しみな選手がたくさんいると思っています。

「平日だから来ることができる」という新しい層の獲得

「フライデーナイトJリーグ」について、高田社長は「今までなかったのが不思議」と持論を語った 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

――政府が「プレミアムフライデー」を提唱している中で、今季からJリーグでも「フライデーナイトJリーグ」と銘打ち、金曜日に試合を行っています。その魅力は何だと思いますか?

 今までなかったのが不思議かもしれません。プロ野球に関しては年間140試合ほどある中で、サッカーは土日の開催がほとんどです。この前、広島に行ったとき、金曜の22時過ぎでしたが、「カープ女子」も含めてものすごくたくさんの人たちが試合後に、街や駅にたくさんいらしてびっくりしました。そう考えたら、ウイークデーの金曜でもそれだけのことができているわけです。サッカーもできないはずはありません。

 土日は来られなくても平日だったら来ることができた、という人を新しい層として引き込んでいくこともできます。Jリーグが始まって25年が経過して、サッカーのファン・サポーターは現在40代から60代の層が多いです。若い人たちは体も元気だし、仕事もするけれど遊びにもポジティブだから「土日だともったいないんだよな」という人もいるかもしれません。しかし、試合が金曜日だったら土日を遊びに費やすこともできる。そうやって、新しい層を作り出していく。そこには仕掛けやわれわれの努力が必要だと思います。

 私はJリーグを金曜日に開催するというのは、大変良いことだと思っています。そこには「金曜日に来てほしい」というメッセージを誰に出していくのかということも当然、関係してきます。私のような70代、シニア世代の皆さんの多くは、仕事をリタイアされているから何曜日でも大丈夫。そう考えたら、サッカーも年齢的には若い層を取り込んでいかないといけないと思っています。

――大都市圏と地方都市では働き方や交通事情も違ってきます。金曜開催における集客のアプローチにも、工夫が必要ではないでしょうか?

 スタジアムの立地は相当、影響しますね。広島に行ったとき、タクシーの運転手さんやいろいろな方々とお話させていただきましたけれど、(サンフレッチェ広島のホーム)エディオンスタジアム広島は山の上にあるんですよね。試合が終わった後にどうやって帰るか、駐車場が埋まっていたらどうするのか。そういう点は、長崎と少し似ているところもあるのかなと思いました。

 現在、長崎に新スタジアム構想がある関係で、(広島東洋カープの本拠地)マツダZoom−Zoomスタジアムも見てきました。あそこは駅から歩いて5〜10分の立地にあります。夜の試合が多い時には21時に試合が終わるとして、そこから渋滞があれば帰宅が23時、24時ごろになる可能性もありますね。長崎のスタジアムの立地というところでは、私も苦労していて大変だと感じています。

 一方で、働き方という面では、国を挙げて働き方改革をやっている影響もあり、現実的には(大都市圏と地方都市で)多少、差があるとは思いますが、地方でも法律に沿ってやっているので、そんなに大きな差があるとは思いません。都市部は大企業が多く、労務の管理は地方よりも進んでいるでしょう。でも、そこは段々と狭まっていると思うので大丈夫だと思います。

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