【戸田和幸連載(6)】慶大で多くを学び、確認できた半年間 Iリーグはいよいよ勝負の後期へ
サッカーよりも勉学が優先される慶應義塾大
全員が集まれる火曜と金曜の使い方を特に大切にしています 【宇都宮徹壱】
慶應義塾大学はサッカーよりも勉学が優先されます。
その上で毎日の練習時間は4チームすべて午前中に組み込まれており、簡単に言うと授業があるので練習に出られない選手が僕のチームの場合、火曜と金曜を除き半分以上出てしまいます。
グラウンドについては夕方には慶應義塾高校や女子チームがトレーニングを行う事もあり午前中からは動かせず、当然ながら授業が優先されるのでそちらも動かせないという中で、週末の試合に向けて準備を進めていく難しさもあります。
Cチームのトレーニングに出られない選手はDチームで練習させてもらう形を採り、平日は調整していく事になりますが、CとDのサッカーももちろん同じではないので、如何にしてCチームの持つプレーモデルやポジション・個々人に与えられる役割を「忘れない」ように出来るかが胆となります。
物理的に不可能な事は不可能なので、実際は何かを諦める必要が出てくる寂しさはありますが、出来る事を出来るだけ行いリーグを闘う事に全力を尽くしています。
Cチームとしてはオフ明けとなる火曜と金曜のみ全員が揃うので、本来は週頭には戦術的な要素は入れ過ぎずに頭の負荷を下げた中で体をほぐし動かすところから始めたいところですが、背に腹は代えられない事情もあるので全体に改めてCチームの持つプレー原則を再認識してもらう為に時間を使うようにしています。
金曜は朝7時からのトレーニングとなり、最初はDチームと半面ずつで30分、その後に全面で使えるのが30分となるので半面時にセットプレーの確認を行い、全面になったら試合に向けた戦術的な確認を行うといった形で進めています。
幾つかの制約はある中、準備というところで見ても全員揃うのが二日しかないので戦術的にそこまで細やかに作れるわけでもありませんが、彼らと共にIリーグで結果を残す為に全員が集まれる火曜と金曜の使い方を特に大切にしています。
限られた時間にはなりましたが、プレシーズンで他校との力関係は大体掴めていたので、まずはそれなりの闘いが出来るようなベースの闘い方を設定する事と、実際の試合の中で迎える難しい時間帯を上手く切り抜け乗り切る為のプランBの準備に時間を使いました。
最高の教材であり、作品でもある選手たち
これまでの人生に於いて、どれだけサッカーに自分の全てを投じてきたとしても指導者としてチームを持つ経験は初めてのもの。
たくさんの時間を費やして学んできた指導者としてのノウハウを実際に指導する事になった選手達に与えてみて、本当に彼らが成長出来るのかどうか。
常に緊張感に包まれた現場での指導となっています。
チームとしての進む方向性を間違えてしまえば当然形にはならないし、フレームはきちんとしたものを用意する事が出来たとしても、中身をしっかり埋めていかないとこれもまた形にはならない。
新米監督の僕にとって選手達は最高の教材であり、これもまた誤解を恐れずに言葉をえらびますが作品でもあります。
彼らをどんな選手にする事が出来るかで指導者としての自分の評価が決まります。
出た結果に対して監督が全ての責任を負うからこそ、細部に渡るまで拘りを持って取り組みます。
だからスケジュール一つとっても例えば事前に相談なく独断で決定してしまったマネージャーに厳しい言葉を投げかける事もあります。
学生とはいえ、皆それぞれが何かしらの責任を負ってチームに関わっている以上、大小問わずその責任をきちんと果たす為に最善を尽くす事を求めてきました。
前期を終えた戦績は2勝5敗。
ゴールを目指す為にボールを効果的に保持する事、相手の出方を見ながらプレー選択を行う事、常にポジショニングの意識を徹底させる事、そして走る事。
Cチームとしては前期で2勝した事は今までなかったと教えてもらいましたが、選手達はもっと勝ち点を獲得出来たと感じていますし、もちろん僕もそう感じています。
まだまだ細かい部分でのポジショニングや判断の間違い、プレーの質が低い為に残念な失点も生まれてしまっていますが、あともう少しでカチッとはまるところまで来ていると感じます。
2月から始まった指導者としての新しい時間も気が付けば半年を過ぎました。
たった半年で非常に多くのものを学び、確認する事が出来ました。後期はいよいよ勝負となります。
このコラムが読む価値のあるものとなれるかどうかは全て結果次第、次回のコラムでは既に後期が開幕しているので良い報告が出来るよう頑張ります。