連載:指導者として

【戸田和幸連載(4)】効果的プレーに必要なポジショニング チャレンジさせ、課題をフィードバック

戸田和幸

全てに於いて熱量が凄いワールドカップ

あっという間にワールドカップも準決勝。男達が全てを出し尽くす、限界まで走りぬく闘いをしっかりと見届けたい 【写真:ロイター/アフロ】

 戸田和幸です。あっという間にワールドカップも準決勝まできてしまいました。
 しかしながらワールドカップ。
 とにかく全てに於いて熱量が凄い。
 4年に一度しかない、世界最大にして最高のスポーツイベント、それがワールドカップ。

 国を代表して闘う使命感、高揚感はクラブレベルでは決して感じる事が出来ないもの。勝利への執念、渇望がむき出しとなった世界トップレベルの男達が全てを出し尽くす、限界まで走りぬく闘いをしっかりと見届けたいと思います。

 さて、前回のコラムでは自分が受け持つ事になった選手達に対してどのようなサッカーの方向性を見せるべきか、またトレーニング(TR)の作り方と実際に行っている内容について描写出来る範囲でお伝えしてみました。

 今原稿を書きながら、ちょうど思い付きましたが、今後は図解なども交えながら、より具体的に自分が行ってきているものをお見せ出来ないか、担当者の方に掛け合ってみようと思います。

「止め」て「蹴る」というサッカーに絶対に必要な基本技術を、如何に自分たちのチームが追い求めるプレーモデルに近づけていく形でレベルアップさせられるのか。
 詰まるところ、僕が指導者として彼らに追求してきている事はこの一点に尽きます。
 サッカーボールという、たくさんの時間と思いを寄せてようやく思うように飛んでくれるようになる球体を、如何にチームとして意図的に効果的に保持しながらゴールを目指す事が出来るか。
 ゴールを目指す前提で、実際どのような形でボールを保持するのか。

 そういった全体像を設計する事が指導者である僕の仕事になります。一つ一つの所作も含めて、個々人がそれぞれのポジションにて、求められている役割をきちんと果たす事が出来るよう。
 時にセパレートなTRを行いながら、各個人・各ポジション無駄なくスキルアップ出来るようなTRを考え、トライ&エラーを繰り返しながら今日まで指導させてもらってきています。
 4月末にインディペンデンスリーグ(Iリーグ)が開幕し、それまでの毎週末、色々な大学に胸を借りる形で強化を図りました。

ポジショニングは効果的にプレーする為に絶対に必要

 選手達には、「いつ・どこ・なぜ」といった事を常に思考しながら、対戦相手の陣形に対して効果的な「ポジション」を取り攻守を行う事。
 こういった事を毎日・毎試合、チームと個々人に対して、僕なりにテーマを与えながら進めてきました。

「ポジショニング」

 サッカーをはじめとする多くのチームスポーツにおいて、ポジショニングというものは効果的にプレーする為には絶対に必要なものです。
 サッカーにおいては同じフィールド上で両チームの選手が常に入り乱れる中で攻防が行われる為、殊更にこの要素は重要となります。
 例えば今日までの日本におけるサッカー中継では、このポジショニングについての言及が非常に少ない中で作られてきました。

 何故か。
 それはポジショニングというものが「重要」だという考え自体が、まだ浸透しきっていないからではないかと。
 解説者として5年目に差し掛かり、これまで数多くの中継に携わらせてもらってきましたが、常々そう感じてきました。

 自分の選手時代を振り返ってみても「いつ・どこに・なぜ」といった事は高校時代を除き教わった事はなく。

 止める・蹴るのレベルを上げる事がより良いサッカーを実現する為の絶対条件だとして。
 そこにこの「ポジショニング」が含まれていないと、多くの選手が混在するピッチ上でまずチームとして、その次に個人として効果的なプレー選択を行う事は難しくなります。

 誰がどこでボールをもらうにしても、そこにはそのチームとしてのサッカーの全体像から導き出されるポジショニングが必要となります。

 仮にそれがないとして、サッカーが出来ないわけではありませんが。
 高いレベルのサッカーにおいて、より確実に効果的にプレー出来るようになる為には、きちんとしたオーガナイズがベースとなったポジショニング、更にはポジション毎の具体的な役割が大切だと僕は考えています。
 チームと選手が効果的に、また効率的にプレーする為にとても重要なのがポジショニングなのです。

 ですので、選手達には例えば後方からビルドアップを行う時に、対戦相手の陣形に対しゴールから逆算したところから効果的なポジションを取る事。
 それからリスクを背負い過ぎない形で如何に効果的にハーフラインを越えられるかという事を、具体的なオーガナイズとベースとなるポジショニングを伝えながら、少しずつ少しずつ発展させる形でチーム作りを行ってきました。

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著者プロフィール

桐蔭学園高を卒業後、清水エスパルスに加入。2002年ワールドカップ日韓大会では守備的MFとして4試合にフル出場し、ベスト16進出に貢献。その後は国内の複数クラブ、イングランドの名門トッテナム、オランダのADOデンハーグなど海外でもプレー。13年限りで現役を引退。プロフェッショナルのカテゴリーで監督になる目標に向けて、18年からは慶應義塾大学ソッカー部のコーチに就任。また「解説者」というサッカーを「言語化」する仕事について、5月31日に洋泉社より初の著書『解説者の流儀』を出版

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