瀬戸大也が貫く「前半から攻める」姿勢 ライバルに勝つため求める爆発力

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「やるべきことは明確に見えた」と手応え

瀬戸はパンパシ水泳で金1つ、銅1つを獲得。夏休みの子どもたちの「ヒーロー」を演じてみせた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 2002年の夏、横浜国際プールで行われた第9回パンパシフィック選手権の会場で、選手の出待ちをするほど競泳にのめり込んでいた当時8歳の少年がいた。その少年は16年ぶりに日本に帰ってきた第13回大会(東京辰巳国際水泳場)で金メダル1つ、銅メダル1つを獲得し、超満員の会場を沸かせた。

 瀬戸大也(ANA)その人だ。
 24歳になった瀬戸は9日の400メートル個人メドレーで銅メダルを獲得すると、10日の200メートルバタフライでは金メダルに輝き、「目標だった『子どもたちのヒーロー』に少しは届いたかな」と笑顔。かつての瀬戸少年に面影を合わせるかのように、会場に集まった子どもたちに夏休みの思い出をプレゼントした。

 今大会、瀬戸は3種目に登場。上記2種目に加え、11日の200メートル個人メドレーでも表彰台を狙ったが、調整不足と疲れが影響してか4位でフィニッシュ。とはいえ大会を振り返り「東京五輪へ向けてやるべきことは明確に見えた」と表情は晴れやかだった。充実感をにじませた理由は、本腰を入れて練習に取り組んでいた400メートル個人メドレーでの、あるチャレンジにあった。

本命種目での大きなチャレンジ

400メートル個人メドレーの表彰台で笑顔を見せる(左から)萩野、カリシュ、瀬戸。実績十分の“3強”が個人メドレーを引っ張っている 【写真:アフロ】

「金メダルが一番狙いやすい」とこの種目を本命と考えている瀬戸。17年世界選手権覇者のチェイス・カリシュ(米国)、16年リオデジャネイロ五輪金メダリストの萩野公介(ブリヂストン)といった強力なライバルとの真剣勝負のレースは、自身の現在地を確認する絶好の機会となるが、瀬戸は前半から「全力を出し尽くす」ことを選択する。

 バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形の順番で泳ぐ個人メドレーともなると、泳ぎ方に得意・不得意があり、ペース配分は大事な戦略となる。実際に平泳ぎを得意としているカリシュは、「前半の種目は彼ら(瀬戸、萩野)より強くないので、自分のペースを保ってやっていこうと思う」と冷静にプランを描いていた。

 しかし瀬戸はスタート直後からがむしゃらに飛び出しトップに躍り出ると、折り返しの200メートル地点で3番手のカリシュに1秒42もの差をつけた。いくらカリシュが平泳ぎを得意としていようが、追いつけないのではと思わせるくらい瀬戸には勢いがあった。だが「最後は抜け殻のような泳ぎ」となり失速してしまい、カリシュには平泳ぎで追い抜かれ、萩野にも最後の100メートルで競り負けて3位でのフィニッシュとなった。

「全力では泳ぎ切れたかなと思うのですが、負けたというのは率直に悔しいですし、もっといいレース展開もあったんじゃないかなと思うと少し後悔はあります。しかし中途半端にいくよりはこうやって攻めて、最後の自由形が1分2秒ほどかかってしまうすごい遅いラップでも、今回の泳ぎ方の方が収穫があるかなと思います」

 4分12秒60と自己ベスト(4分7秒99)からは程遠いタイムにも、瀬戸はレースをこう振り返り、胸を張った。

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