【新日本プロレス】棚橋がオカダとドローで優勝決定戦進出 3度目Vへ「ちょっくら優勝してきます」

高木裕美

棚橋弘至がAブロック首位となりG1優勝決定戦へ 【写真:SHUEHI YOKOTA/宮木和佳子】

 新日本プロレスの真夏の祭典「戦国炎舞 -KIZNA- Presents G1 CLIMAX 28」第17戦となる10日の東京・日本武道館大会では、Aブロック公式戦5試合などが行われ、6180人を動員した。

 なお、新日本が武道館で興行を行うのは、メインイベントで高山善廣と中邑真輔がNWFヘビー級王座を争った2003年6月13日以来、約15年ぶり。なお、G1が武道館で行われるのも、武道館3連戦も史上初となる。

 今年のG1は20選手が2ブロックに分かれ、総当りリーグ戦で激突。各ブロックの1位同士が最終戦8.12武道館のメインイベントで優勝決定戦を争う。

 この日はAブロック最終公式戦5試合が行われ、棚橋弘至が7勝1敗1分の15点を獲得し、優勝決定戦進出が決定。3年ぶり3度目の優勝へ王手をかけた。

勝利にこだわり続けた棚橋

30分間死力を尽くした2人。棚橋(右)は最後まで勝利にこだわり攻め続けた 【写真:SHUEHI YOKOTA/宮木和佳子】

 メインイベントでは棚橋弘至とオカダ・カズチカが30分時間切れ引き分けとなる激闘を繰り広げた。

 12年2月、当時IWGPヘビー級王座を11度連続防衛していた棚橋をオカダが玉座から引きずり降ろし、時代を変えて以来、6年半にわたって続いてきた両者のライバルストーリー。過去の通算戦績では、オカダが5勝4敗2引き分けと勝ち越しており、今年5.4博多でのIWGP戦でも、オカダが棚橋を下して、新記録となるV12を達成。数字の上では、オカダが棚橋を「超えた」状況となっている。だが、新日本の冬の時代を支え、乗り越えてきた男は、世代交代の波に飲み込まれそうになりながらも、まだ、夢をあきらめてはいなかった。

 G1での過去の両者の戦績は13年、16年の2戦とも30分時間切れ引き分け。セミでジェイが敗れたことにより、棚橋はこの試合で勝つか引き分ければ決勝に進出できることを知りながら、あえて、勝ちを狙いに行った。

 会場の規則で風船の持ち込みを禁じられたオカダは、この日は何も持たずに入場。対する棚橋は、時折ステップを踏みながら軽やかにリングインする。場内の歓声は圧倒的に「棚橋」優勢の中、ゴング。棚橋が左ヒザ攻めに出ると、オカダも棚橋のお株を奪う逆ドラゴンスクリューからのヒザ攻め返し。すると、棚橋もオカダに先じてツームストンを発射する。

 15分過ぎ、棚橋の場外へのハイフライアタックを食らったオカダは、七転八倒しながらも何とかリングに戻るが、棚橋はすかさずロープをはさんでの逆回転ドラゴンスクリューからのテキサスクローバーホールド。さらにその体勢からスタイルズクラッシュにたたきつけ、必殺技のハイフライフローを繰り出すが、これはかわされて自爆。オカダはドロップキック2連発からレインメーカーを狙うも、棚橋が切り返してスリングブレイド。さらにツイストアンドシャウト3連発から再度スリングブレイドを放ち、もう一度ハイフライフローを狙うも、オカダがドロップキックで迎撃し、さらにツームストン。勝たなければ決勝へ進めないオカダは、雄たけびを上げ、ドロップキック、ローリング式レインメーカーを決めるが、棚橋も小包固め、ドラゴンスープレックス。残り30秒のアナウンスが聞こえてもなお、棚橋はハイフライフローで勝ちに行くが、カウントは2。それでも2発目を狙おうとしたところで、時間切れのゴングが打ち鳴らされた。

オカダは初の「無冠」の夏に

IWGPのベルトを失い、G1優勝も逃したオカダ。失意の夏を経験し、奮起は? 【写真:SHUEHI YOKOTA/宮木和佳子】

 リング上でガッツポーズを連発し、観客の大歓声に「一言だけ。ちょっくら優勝してきます!」と、仮面ライダービルドのポーズで宣言してみせた棚橋は、バックステージでも「G1は17回目の出場だけど、今までの中で充実感が一番です」と、心技体そろった充足ぶりをアピール。5月のIWGP戦の前には、オカダに「あなた、何やってたんですか。ケガして、復帰して、ケガして、復帰して、チャンピオンでなくなって、NEW JAPAN CUP(NJC)準優勝して。つまんねぇ男だな」とさんざんにコキおろされたが、棚橋自身も「ケガで苦しんで、年に何回も欠場して、『無理しなくていい』と言われて、気持ちばかり焦って。でも、そんな体でも、オレのために一生懸命動こうとしてくれて。だから1回、この体を受け入れて、できる技で、できる全力で、今の棚橋弘至で戦う」という境地に達したことで、このG1中は、必殺技にこだわらない、柔軟な戦い方でコツコツと白星をつかんできた。

 準優勝に終わった春のNJCでも、決勝前に「もう一度、頂点に返り咲く」と予告していた棚橋にとって、夏のG1の決勝進出は、もちろんまだ通過点だ。「『棚橋、ご苦労さん』って空気、やめてくれるかな。オレの夢はまだ続いているから」と言い切った男が見据えるのは、3年ぶりの優勝、そして、その先にある1.4東京ドームのメインイベントとIWGPヘビー級王座返り咲きだ。初主演映画「パパはわるものチャンピオン」の全国公開(9月21日)を前に、棚橋が真夏のチャンピオンへと上り詰めるか。

 一方、オカダは6勝2敗1分の13点で2位。これまで、12年、14年と、IWGP王座を保持していなかった年は必ずG1で優勝していたが、今年はあと一歩届かなかった。レインメーカーとして初めて迎える「無冠」の夏。新トレードマークの風船すらも武道館では封じられ、いまや八方塞りとなった男が、この苦境を乗り越えてさらなる変貌を遂げるのか。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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