豊川、冨安、遠藤が過ごす充実の日々 欧州と日本の差をひしひしと感じた週末

中田徹

豊川がシュート、記録はオウンゴール

週末は遠藤(左)、冨安(右)らベルギーリーグの日本人選手が活躍 【Francois Walschaerts/共同通信イメージズ】

 現地時間8月4日に行われたベルギーリーグ第2節、シャルルロワをホームに迎えたオイペンは、1−4で逆転負けを喫してしまった。オイペンは開幕2連敗。2試合で3得点9失点と苦しいシーズンスタートになった。

 オイペンの先制ゴールに大きく関与したのが、豊川雄太だった。この日、左サイドハーフとして今季初の先発出場を果たした豊川は10分に左足でシュートを放つと、これが相手DFのクリアミスを誘い、ゴールに吸い込まれていった。

 場内アナウンスが「ゴールはユータ・トヨカワ!」と叫ぶ中、豊川は自軍ベンチに向かって歓喜の疾走。しかし、記録はオウンゴールになってしまった。試合後の豊川は「1点、(自分のゴールが)欲しかった。でも、次は文句なしのゴールを決めます」と誓った。

 オイペンが1−2と1点ビハインドで迎えた50分、MFエリック・オカンシーがエルボーで退場処分を受けた。クロード・マケレレ監督は「4−2−3−1」から「4−3−2」にフォーメーションを変え、豊川とダビッド・ポレの2トップに切り替える。58分にダニエル・ミリセビッチ、64分にミーガン・ローランが好機を迎えるもシュートを決め切れず、75分の豊川のシュートも相手にブロックされた。

 オイペンは80分に1−3とリードを広げられてしまう。マケレレ監督はフォーメーションを「3−4−1−1」にして、豊川をウイングバッグ気味の左サイドハーフに置いた。しかし、システム変更直後の混乱から83分にカーベ・ラザエイにダメ押しゴールを決められ勝負あり。このシーンでは、味方の右サイドバック(SB)と豊川のポジショニングミスが重なり、「映像を見返さないといけませんが、反省です」と豊川は振り返っていた。

豊川「俺は1歩進んで2歩下がり、3歩進んでいく」

豊川はオイペンでハングリーに戦っている(写真は開幕節のクラブ・ブルージュ戦) 【Getty Images】

 シャルルロワ戦の豊川は、左右のサイドハーフ、センターFWと3つのポジションをこなした。3点差のビハインドを負ったため、右サイドハーフの位置では前に残ることも多かった豊川だが、守備の場面ではセネガル代表歴1回の大型MFアマラ・バビと対峙(たいじ)した。183センチという情報が多いが、実際はもっと背が高いと感じさせる迫力を持ち、前方への推進力と長いリーチが魅力のレフティーだ。

「(身体能力に秀でた相手と)やるだけですよ。そしたら、何かが見えます。あんなに足が長くて速い選手。あんなのJリーグにいない。それも楽しいです。

 ワールドカップもそうですけれど、日本人同士で戦っているわけではない。(日本が対戦した)ベルギー、コロンビア、セネガルもそうですが、身体能力がえげつない選手がここにはいます。ベルギーで、やれているのはうれしいです」(豊川)

 日本戦でゴールを決めたセネガル代表のDFムサ・ワゲは、オイペンからバルセロナへとステップアップを果たした。

「ワゲはね、俺のアパートの上に住んでいたんです。ワゲはバルセロナ、俺はここ。俺はワゲみたいに一気に上にいかない。俺は1歩進んで2歩下がり、3歩進んでいくんです」(豊川)

 オイペンという日の当たらぬクラブで、豊川はハングリーに戦っている。

冨安はゲンク戦で徹底したマンツーマン戦術を実行

 5日はゲンクとシント=トロイデンVV(STVV)の試合を観た。開幕戦でロケレン相手にゲンクが見せたパス・アンド・ムーブのサッカーは、ベルギー国中に大きなインパクトを与えた。ポゼッションサッカー志向のSTVVマーク・ブレイス監督だが、ヘンクとのアウェーマッチではオールコートプレスのような、徹底したマンツーマン戦術を採った。フォーメーションは「4−2−3−1」から「3−6−1」に変更され、冨安健洋は3バックの右を努めた。対峙したのはヘンク育成システムの傑作の1人、レアンドロ・トロサールだった。

 トロサールのオリジナルポジションは左サイドハーフだが、ポジションチェンジを頻繁に行うゲンクにおいて、トロサールはトップ下にも、右サイドにも、自軍のDFラインの手前にもポジションを変えてくる。そのどこへでも冨安は付いていった。

「今日ほどのマンツーマンは、これまでやったことがない」(冨安)

 チームのクオリティーの差をオールコートプレスの守備が埋め、決定的なピンチを皆が体を張って守り、最後はGKケニー・ステッペのファインセーブと、4度のバー直撃と、ゲンクのシュートミスがSTVVを救った。

 それでも前半はSTVVもカウンターから好機を迎えたが、後半はゲンクの猛攻にサンドバッグ状態だった。

 しかも、この日はゲンクのキーマンの1人、ルスラン・マリノフスキーのFKが当たっていた。直接FKのキッカーだけは、STVVも密着マークできない。68分、マリノフスキーの左足のFKが火を吹いて、ヘンクゴール右上隅に突き刺さった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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