豊川、冨安、遠藤が過ごす充実の日々 欧州と日本の差をひしひしと感じた週末

中田徹

日本より前のポジションでポジティブに戦う遠藤

遠藤はベルギーデビューからわずか3分でゴールを挙げた 【Francois Walschaerts/共同通信イメージズ】

 ここでチームを救ったのが遠藤航だった。失点直後の69分、ピッチに立った遠藤はその3分後、自陣からのパス・アンド・ゴーで相手ペナルティーエリア手前まで走り込み、ヨアン・ボリからの折り返しを右足で振り抜き、同点ゴールを決めたのだ。

「(チームが失点し)もうやることがはっきりした。『ゴールを取りにいく』『追いつく』ということだけだった。積極的に前に出ていくことは自分の良さなので、そこを出せたとも思います」(遠藤)

 この日の遠藤は右のインサイドハーフとしてマリノフスキーをマークしつつ、ボールを持ったらはたいて中盤の態勢を整えたり、前にパスを付けたりしてから、前方へ走ることを続けた。日本ではセンターバック(CB)、SB、アンカー、ボランチといった守備的なポジションを複数こなせる存在だったが、STVVではポジションを前に移した。

「こちらに来てからは、どちらかというと2シャドーのポジションでやらせてもらうことが練習で多い。(ボールを)前に付けてそのまま前に出ていくところを監督が見てくれているのかなと思います。

 日本でもそうでしたが、監督が変わるごとにポジションが変わっていました。それが良い意味で言えばポリバレント、どこでもできてオールマイティーな選手として見られるのですが、『本当のポジションはどこなの?』という感じもあった。僕自身はポジションが変わることに免疫はあるので、とてもポジティブにやっています」(遠藤)

自身の出来に満足できず、打ちひしがれた冨安

時に打ちひしがれながら、冨安は非常に内容の濃い日々を過ごしている 【Getty Images】

 最高のデビューを飾った遠藤の横で、冨安はトロサールとの1対1に打ちひしがれていた。

「(トロサールは)本当に良い選手ですよね。決定的なシュートを何本も打たれていますし、決定的なパスも通されています。抑えた感覚はない。逆にかなりやられたというか……。

 僕の中では、ボールが彼に入る前に、いかにできるだけ近い距離感でいられるかというのを意識していた。だけど結局、インターセプトは1回もできなかった。ボールが入った後、後ろ向きにさせても、ワンフェイク、ツーフェイク入れて、僕との距離を付けられて、パッと抜かれたりしたので、やっぱり余裕があったんだと思います。全然、(自分のマークを)プレッシャーにも感じていなかったんじゃないですかね」(冨安)

 確かにトロサールはすごかった。しかし、冨安にも良い守備はあったのだ。「インターセプトは1回もできなかった」と本人は言うが、終盤にはトロサールからアレハンドロ・ポズエロの決定的なスルーパスをカットし、チームを救った。

 ここまで2試合にフル出場し、180分間で失点1。その失点もFKを直接決められたもので、冨安としても防ぎようがない。19歳の新鋭CBは、非常に内容の濃い日々を過ごしている。

「自分の間合いでやってはいたつもりなんですけれど、懐に入らせてくれなかったりとか、(トロサールは)かなり手強い相手だった。ああいう選手と継続して対戦するためにも、練習からアピールして試合に出続けないといけないと思います」(冨安)

 欧州と日本が違うのは誰もが分かっている。それでいてもなお、豊川雄太、冨安健洋、遠藤航にとっては、その差をひしひしと感じた週末だった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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