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圧倒Vの桃田賢斗に増えた強み
深い感謝の心と「ラリーで我慢する力」

中国のエースを圧倒した決勝戦

今年代表に復帰した桃田。圧倒的な強さで、日本男子初の世界選手権優勝を飾った
今年代表に復帰した桃田。圧倒的な強さで、日本男子初の世界選手権優勝を飾った【Getty Images】

 スキャンダルから帰って来た若者は、伝説への第一歩を踏み出した。バドミントンの世界選手権が5日に最終日を迎え、男子シングルス決勝は、桃田賢斗(NTT東日本)がストレート(21−11、21−13)で石宇奇(中国)を破り、日本男子初となる優勝を飾った。


 世界一を決める戦いで相手を圧倒した。

 相手は、開催国である中国のエース。2万人収容の南京市ユースオリンピック公園アリーナを埋めた観衆は、地元優勝を期待していた。しかし、石宇奇が得意とする強打を、桃田はことごとく好返球。計ったように、ネット前へストンと落とし続けると、目の肥えた中国の観客がざわめいた。石宇奇は、連続攻撃を仕掛けられないどころか、強打を打てばピンチになる展開に追い込まれ、ミスを連発。攻め手を失ったことを悟った観衆は、ため息を漏らした。桃田は「相手のウイニングショットを取ることで、プレッシャーをかけられたと思う」と強打封殺でスコア以上の差を印象付けた。


 大会を通して、3回戦でデンマークの選手に苦戦した以外は、相手が弱く見えるほど、余力のある勝利だった。それだけに、日本代表の朴柱奉ヘッドコーチが「現地に来てから腹筋を痛めていて、まだ100パーセントではない。3回戦までは自分から攻撃をしない作戦にした。決勝でも、自分から強打を打つ場面は少なかった」と明かした事実は衝撃だった。けがを抱え、戦い方を限定しても段違い。世界ランク2位と4位のシード選手2人が欠場する幸運なブロックだったとは言え、衝撃的な勝ち方だった。

プレー面の進化 中西コーチ「幅が出てきた」

ラリーで粘り、勝負どころで強打を放つ。幅のあるプレーで試合の主導権を握った
ラリーで粘り、勝負どころで強打を放つ。幅のあるプレーで試合の主導権を握った【大会公式提供】

 世界選手権の出場は、3年ぶり。2016年4月に違法賭博店の利用が発覚して資格停止処分を受け、国際舞台から遠ざかった。昨夏に処分が解かれ、格下の大会でポイントを積み重ね、今年から日本代表に復帰。トップレベルの舞台に帰って来たことを証明する大会だったが「(ブランク前の)世界ランク2位のときより、今の自分の方がバドミントンを楽しめていると思うし、今の自分の方が強いと思う。以前のレベルに戻って来たというより、以前の自分を超えて進化している最中。もっとレベルアップできる」と話したとおり、15年に獲得した銅メダルを超える成績を収め、完全復活と進化を世界に見せつけた。


 ブランクを経て進化した要因は、心身の充実だ。代表選手の立場を忘れた軽率な行動で事件を起こし、金メダル候補となっていた16年リオデジャネイロ五輪を棒に振ってブランクを作ってしまったが、復帰後は、常に感謝の大切さを強調している。感謝の気持ちは、コート上でどのように表れるのかと聞かれると、桃田は「今日も最後の方はきつくて、シャトルを追うのを止めてしまった方が楽になるんじゃないか、1点くらい取られても大丈夫じゃないかと思ってしまうときもあったけど、しっかり自分を奮い立たせてくれたのが、感謝の気持ちじゃないかと思う」と答えた。

 以前は、テクニックに頼った戦いが多く、トップレベルの争いでは我慢比べに負けることもあったが、メンタルの充実があと一歩の粘りとショットの質を支えている。疲労感に負けて腕だけで打ってしまえば、技術はぶれるが、足をしっかりと運んで打つことでショットは安定する。


 プレーの土台となるフィジカル要素も向上した。復帰後は、変動しやすいという体重を70キロ台前半でコントロール。ブランク前とのプレーの比較について、日本代表の男子シングルスを担当している中西洋介コーチは「強打もあって、ラリーもできるのが今の強み。ブランク前は、ラリーで勝てるのは、あくまでも同等以下の相手だった。シン龍(※シンは、ごんべんに甚)や林丹といった中国のトップ選手と対戦すると、勝負球が決まらずに、我慢できなくてミスをしてしまっていた。今は、ラリーが10回、20回と続いても、自分が決められるところまで我慢できる。高いレベルで、試合時間が長くなっても勝てるようになった。今までは上手さだけが光っていたけど、強さ、速さが加わって幅が出てきた」と成長を認めた。

平野貴也
平野貴也

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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