圧倒Vの桃田賢斗に増えた強み 深い感謝の心と「ラリーで我慢する力」

平野貴也

目指すレジェンドへの道「応援される選手になりたい」

ユニホーム左胸にある、日本国旗のマークにキスをするような仕草を見せる桃田。プレーの進化と、感謝の心、その両方が、桃田を優勝へ導いた 【大会公式提供】

 復帰して進化を示し、世界一になった。2年前の春、染め直した黒髪と見慣れないスーツ姿で神妙な面持ちを見せた若者は、好きなバドミントンで世界一に立って笑った。次に桃田が目指すのは「レジェンド(伝説)」の道だ。将来は、五輪2連覇の林丹や、五輪で3大会銀メダルのリー・チョンウェイ(マレーシア)のような、バドミントン界で誰もが憧れる選手になりたいという。

「2人みたいに、できれば長い時間、観客の皆様を楽しませられるプレーヤーになりたい。世界中から愛されて、応援される選手になりたい。一度、世界のトップに立った選手は必ず追われて、追いつめられるけど、挑戦者の気持ちを忘れずにレベルアップしたい。勝利だけでなく、コート内のマナー、コート外の応援してくれる方への対応とか、そういうのが、応援される、愛される一つの要因になると思う。自分もレジェンドと言われる選手になりたい」(桃田)

 精神的な成長は、今の姿勢が崩れない限り続くだろう。そして、プレー面ではさらなるフィジカル強化で2020年東京五輪に向けてレベルアップを図る。中西コーチは「あと1、2年で体力的にもっと伸ばしたい。彼はよく『外す』という表現を使う。イメージとしては、直線勝負を避ける意味。例えば、スマッシュを打ってネット前に走って決めに行くようなスピード勝負の展開ではなく、前後に揺さぶるといった意味。身体的に直線勝負をしたくないから『外す』という表現になる。彼の中でもスピードやパワーでは相手が上だなと思う選手が何人かいるのだと思うし、桃田よりスマッシュや動きの速い選手は、たくさんいる。でも、フィジカル要素が近付けば、もっと技術の差が出る」と進化のイメージを描いている。

 今大会は格下相手で楽な展開が続いたが、桃田が言うようにマークされる存在になれば、厳しい試合も増える。ハイレベルな大会で厳しい勝負が続いても、技術だけでなく、スピード勝負、スタミナ勝負も受けて立てる絶対王者に、そして成績と内容を示し続けるレジェンドに。大きな失敗を成長のきっかけにして世界一に輝いた桃田の進化は、さらに続く。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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