バドミントン界も"エンタメ改革"スタート 新大会トップ4の演出はどうだった?

平野貴也

スポットライト、オーケストラ――大きく変わった演出面

初開催の「トップ4トーナメント」。見て楽しむバドミントンを目指した、第一歩を踏み出した 【主催者提供】

 日本の大会を国際レベルに引き上げる――五輪や世界選手権でトップを狙う実力を備えた日本バドミントン界が、競技の魅力を伝える舞台提供のレベルアップに挑み始めた。3月24、25日の両日、国内最先端の演出設備を備えたゼビオアリーナ仙台で団体戦「トップ4トーナメント」が開催された。

 これまでの国内大会にはなかった演出が、一つの特徴だった。暗転した会場で1つのコートが光に浮かび上がる。決勝戦の前には、オーケストラの生演奏があり、DJのコールで呼び込まれた選手がスポットライトに照らされたゲートから入場。古めかしいチーム整列、入場、あいさつといった進行はなく、印象は大きく変わった。コートレベルには、試合を見ながらテーブルで飲食ができるロイヤルボックスや、コートの間近で試合を見られる席などが設けられ、優雅さや臨場感の漂う空間で試合は行われた。シャトルを打つ音が静寂に響き、観衆の視線をコートに釘付けにする中、選手の雄たけびや観衆のどよめきが轟くなど競技の魅力がよく伝わった。

 大会は、国内の団体戦S/Jリーグ上位4チームが参加。2016年リオデジャネイロ五輪の金メダリスト高橋礼華、松友美佐紀(日本ユニシス)や、女子シングルス世界ランク2位(3月22日時点)の山口茜(再春館製薬所)ら豪華メンバーが出場。男子はトナミ運輸、女子は再春館製薬所が初代王者となった。

選手からも好評「海外大会に雰囲気が近く、モチベーションが上がる」

スポットライトの中、登場する選手たち 【写真:平野貴也】

 新たな大会は、日本バドミントン界の未来を二つの面で考えさせる興味深いものだった。一つが、演出面を含めた大会運営の変化だ。アマチュアらしい純然たる競技会としての機能だけでなく、プロのように試合を見る多くの人に大会を楽しんでもらうための工夫が行われた。
 近年、注力している「見る競技」としての進化が狙いだ。元日本代表で大会のコンセプト作りに尽力した池田信太郎アンバサダーは、集客面(初日が1,900人、最終日で収容人数の半分強にあたる2,300人と発表)で課題が残ったことに言及しながらも「新しい物を作るというより、国際基準にしようということ。演出は、ある程度のクオリティーまで持っていけた。バドミントンの大会運営が初めてのスタッフも多かったので、続けていけばもっと良くなると思う。(演出設備の充実した)この会場でなければできない雰囲気作りができたし、選手が頑張ってくれた。来てくれたお客さんには、ある程度、満足度の高い大会にできたのではないかと思う」と手ごたえを話した。

 初の試みで運営側の大会進行や選手たちの反応に、多少のぎこちなさはあったが、継続されれば改善されるだろう。今井茂満大会委員長は「コートの隣で食事など不謹慎だという意見もあったけど、照明で目立たなくできた。(競技面に支障を生んで)本末転倒にならない注意が必要だけど、いろいろなことを試して、より試合を楽しみやすくしたい。(反対意見の)文句が出るくらいに色々とやりたい」とさらなる演出の工夫に積極的だった。

 新たな取り組みは、選手にも好評。BWFワールドツアー最高レベルの全英オープンで日本人初の混合ダブルス優勝を果たしたばかりの渡辺勇大(日本ユニシス)は初日に「光や音の演出は、かなり大事。海外の大会に雰囲気が近く、モチベーションが上がる。いつもの大会より雰囲気は良い。コートの外にいるときの選手紹介はちょっと違うかなと思ったけど。コートの中で紹介されて、誰かバック転でもすれば良いんですよ、オレはできないですけど」と改善のアイデアを出しつつ、様式変更に肯定的な姿勢を示していた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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