比江島慎「自信を得るために海外へ」 NBLブリスベン・ブレッツ 移籍会見

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ブリスベン・ブレッツへの移籍会見に臨んだ比江島慎 【写真:バスケットLIVE】

 2017−18シーズンBリーグMVPの移籍は急転直下で決着した。昨季までシーホース三河でプレーし、日本代表の中心選手でもある比江島慎は、7月20日に宇都宮市内で栃木ブレックス加入の「お披露目」を済ませている。しかし栃木への移籍が決まった時点で、「海外リーグへの挑戦を最大限サポートする」という方針が合わせてクラブから発表されていた。
 栃木入りが発表された直後にNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)に所属する「ブリスベン・ブレッツ」との交渉が決着。比江島にとっては28歳にして初の海外挑戦が決まった。オーストラリアは世界でもトップ10に入る強国で、国内リーグであるNBLのレベルも当然高い。加えて「アジア人枠」が導入されているため、日本人選手が加入しやすい前提条件があった。

 NBLは18年10月11日に開幕し、リーグ戦の終了が19年2月17日。ワールドカップ(W杯)のアジア2次予選が行われる時期は試合が組まれておらず、代表への参加はスケジュール的に可能だ。Bリーグの18−19シーズンの登録期限は「2月末日」で確定しており、チームがプレーオフに進めなかった場合は、NBLのシーズン終了後にBリーグでもプレーできる。ただし3月に終了するプレーオフへ進出した場合は、18−19シーズン中のBリーグ復帰はできない。

 3日に東京都内で記者会見が行われ、比江島本人が移籍に至った背景、思いを説明している。(リード文:大島和人)

この歳がラストチャンス

 オーストラリアへ行くことになりました。アジア人枠、外国人枠で行くので、結果を求められてくると思います。その責任と自覚を持ってプレーしてきたいと考えています。

――これまでも海外挑戦の意欲は口にしてきたが、28歳というこのタイミングでオーストラリアへ行くことになった気持ちは?

 この歳がラストチャンスかなと思っています。来年はワールドカップ(W杯)があり、その次の年には東京五輪もある。アジアで通用する自信は持っていますが、世界となると……。オーストラリアもアジアという枠ではあるけれど、少しレベルが違って頭一つ抜けている。世界で(戦うという)自信を得るために、海外への移籍するのはこのタイミングしかないと自分の中で思った。ちょうど(NBLに)アジア人枠ができるというのも聞いたので、自分がプレーする可能性はあるのかなと思った。今回は本当に実現してよかったです。

 まさか自分でも行けるとは思っていなかったので、海外のチームに受け入れてもらえることは素直にうれしいです。また一つ成長できる環境があることにも感謝したい。不安も結構大きいですが、行くからには楽しみです。特にプレーに関しては楽しみな部分が大きいです。

――オーストラリアでプレーする上で期待と不安は?

 Bリーグから海外のリーグに行くのはあまり例がありません。自分がオーストラリアでもし失敗したら、次がないのかなというところもある。BリーグのMVPを取って行くので、日本のレベルをどうしても見られる。その中でしっかりプレーして、成功すれば次につながる。そこはやっていきたいです。

 不安は……フィジカルが強いので、そこで対応できるのかという不安はあります。あと私生活でやっていけるのかよく分からない(笑)。英語もできないですし。ただ、それは人として成長できる環境なのかなと思っています。

――「失敗」とはどういう意味か?

 プレータイムを与えてもらえないということですかね。ディフェンスはある程度はやれる自信がありますけれど、ディフェンスで求められるところもあるのと思うので、そこで負けてしまったり……。失敗するイメージは今のところないので分からないです。

――ブレッツのアンドレイ・レマニスヘッドコーチ(HC)は、オーストラリア代表のコーチも務めている。今回の移籍に関して、何か会話はあったのか?

 契約するときに、テレビ電話で会話を2度くらいしています。向こうの監督さんも、僕を気に入ってくれているみたいですし、自分もオーストラリア代表とやって、素晴らしいバスケットができると実感しています。そこでやることで自分が成長すると感じています。

 自分がW杯、東京五輪に向けてもう一段階成長したいという意思を伝えて、向こうも僕が成長できる環境を与えられると言ってくれた。そういう話をして、ブレッツに決めました。

――レマニスHCから「こういうことを期待している」という話は?

 そこまではまだ言われていません。

1対1でもっと磨ける部分がある

――オーストラリアのバスケの印象は?

 一番はフィジカルで、ヨーロッパの国に比べても一段階上だと思います。その中でも、ヨーロッパのきれいなバスケット、うまさ、速さがある。その中でやっていけば、世界と戦うときにプレーヤーとして慣れられると思う。そこをやっていきたい。

――6月29日にはW杯1次予選でそのオーストラリアに勝ったが、自分のどういうプレーに手応えを感じた?

 自分の持ち味はドライブ、緩急をつけてフィジカルの中でもアタックをするところです。そこは代表の中でも多少はできたと思います。ただ、もっともっと質を高めないといけません。Bリーグでは、マッチアップする相手が自分より小さいか、同じくらいですけれど、オーストラリアのリーグはそれが自分より強くて速くて大きい。まず目の前の相手から勝負が始まるし、1対1でもっと磨ける部分があるのかなと思います。

――最終的にはHCの決めることだと思うが、ポジションはSG(シューティングガード)のままか? PG(ポイントガード)へ移ることも想定しているのか?

 そこはまだ監督と話していないんですけれど、監督が求めるポジションであればやろうと思っています。別にポジションの希望はありません。もしPGをやれと言われたら、プレーの幅が広がると思いますし、ある程度経験があるのでやることもできると思います。

――住宅、食事、通訳などの生活環境は?

 家は向こう(クラブ)が用意してくれて、通訳も一緒に来てくれます。そこは大丈夫だと思います。食事は自分で何とかしなければいけないです。

――海外でプレーして成功することで、日本代表や日本のバスケ界にどういう意味があると思うか?

 まず自分が一回り二回りと成長できれば、代表にも生かせると思います。(八村)塁やニック(・ファジーカス)のインサイドは世界で通用すると思うけれど、2番(SG)、3番(SF/スモールフォワード)、1番(PG)のポジションで負けてしまうと世界では戦えない。そこは還元できると思います。

 もしオーストラリアで活躍できれば、日本人の評価も上がるはずです。オーストラリアリーグだけでなく、世界のリーグにBリーグから日本人選手が行く道もできると思います。

――比江島選手のプレーを見られなくなって寂しくなる日本のファンに対してメッセージを。

 オーストラリアリーグに行くことで、僕のプレーを見ることは少なくなってしまうかもしれないですけれど……。日本代表に参加できるなら、そこで試合を見てきてほしいです。まだ(NBLのシーズン終了後などに)日本でプレーできる可能性があるかもしれませんし。

 オーストラリアまで見に来てくれる方がいれば、自分も寂しい思いをしているはずなので(笑)、僕のプレーにいい影響が出ると思うので、ぜひ足を運んでもらいたいです。

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