今、一番ホットな高校生バレーボーラー 水町泰杜を突き動かす純粋な思い

月刊バレーボール

全日本ユース男子に名を連ねた水町 【月刊バレーボール】

 高校バレーボールの夏の全国大会、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)が26日に開幕する。三重県を舞台に男女それぞれ56校が集い、全国の頂点を競い合う。その中でも、男子ではウイングスパイカーの水町泰杜(鎮西高校2年)が注目を集めている。

同年代を代表するスパイカーが持つ葛藤と意欲

 コートを縦横無尽に駆け回り、高く跳び上がる。そして、全身を使ったダイナミックなフォームから、強烈な一撃を放つ。かと思えば、相手ブロックをサラリとかわし、ボールをポトリと相手コートに落とす。ゴムまりのような肉体から繰り出されるトリッキーなプレーの数々。熊本の名門・鎮西高の2年生エース、水町泰杜のことである。

 昨シーズンは1年生ながら、エース兼主将の鍬田憲伸(中央大1年)と2枚看板を形成し、インターハイと全国高等学校選手権大会(春高バレー)の高校2冠に貢献した。「スーパールーキー」として名を馳せ、学年が1つ上がった今シーズンは、ゲームキャプテンを務める。高校バレーボール界きっての逸材だ。

 その彼が常に口にする言葉がある。それは、「この身長で、どうやって点を取るか」というもの。現在、水町の身長は181センチ。一般的に低くはないが、バレーボールの世界では高校生世代でも大型化の傾向にあるのも確かで、コート上で対峙(たいじ)する相手と10センチ以上離れていることもある。今年5月には第67回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会(黒鷲旗)でVリーグのチームと対戦する機会があった。その時にJTサンダーズの小野寺太志(201センチ)と向かいあった際には、「手が長い!」と目を丸くした。

 加えて、スパイカーとして強い存在感を放つほど、相手のマークは厳しいものになっている。だが、そうしたシチュエーションにこそ、水町は胸が躍るのだ。

「3枚ブロックがつくことにも、けっこう慣れましたしね。黒鷲旗も、大人たちが容赦なくきました(笑)。

 ただ、ああいった大きい選手を相手に、どうやって点を取るか。フェイントでも、1点は1点ですから。まだまだ攻撃の『引き出し』を増やしていきたいですね!」

「自分がやられたら嫌なことをやりたい」

今年5月の黒鷲旗では、Vリーガーを相手に奮闘した 【月刊バレーボール】

 かねてより、水町はそのポテンシャルを高く評価されてきた。菊鹿中3年生時にはJOCジュニアオリンピックカップ全国中学校都道府県対抗大会(JOC杯)で、熊本県選抜のエースとして活躍。県選抜を優勝に導くとともに、自身も個人賞である「オリンピック有望選手」に選出された。

 弾けるような動きと、多彩な攻撃はすでにこのころから備わっており、JOC杯の決勝では、高さで勝る東京都選抜を翻弄(ほんろう)する姿が印象的だった。

 その後、全日本中学生選抜の海外遠征メンバーとして、オーストラリアへ。現地ではU−15の同世代と、U−17の年上のチームと試合を重ねた。U−17チームには身長2メートルを越える選手がズラリ。中でも、最高で212センチの選手がいた。その相手に、水町はときにスピードのギアを上げ、ステップにフェイントを織り交ぜ、得点を重ねた。見上げるほどに高いブロックが立ちはだかろうとも、難なく攻略してみせたのである。

 JOC杯やオーストラリア遠征で見せたステップワークについて、水町はこう語る。

「こっちが時間差を仕掛けてくるとなったら、相手もガチガチになるもの。その時に、緩急をつけて、フェイントを入れたら、捕まえられない。というのも、自分がやられたら嫌だな、ということをやりたいと思っているんです。そこでフェイントくるかって思う時もありますし、逆にそれをすれば決まる、ということもあるので」

 そうした動きを、彼は日ごろからイメージしている。練習で試してみて、うまく成功すれば、その感覚を忘れないように、試合本番で繰り出すというのだ。

 2017年末の天皇杯ファイナルラウンドの近畿大戦では、センターエリアからライト方面に素早く移動してスパイクを打ち込む、いわゆるミドルブロッカーのブロード攻撃に近いプレーで得点。試合後には、「公式戦でやったのは初めてです!」と、うれしそうに笑った。

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著者プロフィール

1947年創刊。バレーボールの専門誌として、その黎明期から今日まで、日本のバレーボールを取り上げ、その報道内容は、全日本、Vリーグはもちろん、小・中・高・大学生、ママさんまで、多岐に渡る。

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