今、一番ホットな高校生バレーボーラー 水町泰杜を突き動かす純粋な思い
アジアユースでMVP、2連覇に大きく貢献
今年は全日本ユースのキャプテンとしてアジアユース選手権を戦った 【写真:AVC】
「ここに集まったみんなに、それぞれ違う長所がある。それらを見て、盗んだりできるのは、いい経験になります」
彼を突き動かすのは、もっともっと自分がうまくなりたい、という純粋な願いだ。だからとことん貪欲だし、どこまでもチャレンジ精神でいられる。全日本のアンダーカテゴリーも、挑戦の1つといえるだろう。
「下手なままだったら、上の舞台にもいけないですし、自分がそういう力をつけることでバレーボールがもっともっと楽しくなると思うんです。上手にプレーができるようになったり、強くなった時のことを考えると、楽しいんだろうなって。うまくなりたいです」
今年6月下旬からは、タブリーズ(イラン)で行われた第12回アジアユース男子選手権大会(U−18)に出場。指揮した本多洋監督に「キャリアが一番ある」と太鼓判を押され、水町は全日本ユースチームのキャプテンを務めた。前回大会で全日本ユースは初優勝を飾っており、「やるからには優勝したい」と意気込み、大会へ臨んだ。それと同時に、水町は個人としてもある狙いを持っていた。
「どんなものが通用するのか、どんどん試していきたい。それがハマったときは最高にうれしいですし、吸収して、成長して、日本に帰ってきたいと思います」
水町は全試合に出場し、そして、すべてのゲームで両チーム最多得点をマーク。堂々の大会MVPに輝き、大会2連覇に大きく貢献した。
日本のユース世代を代表するスパイカーとして、ついにはアジア圏に、「水町泰杜」の名前を刻んだのである。
世界的プレーヤー、クビアクへの憧れとともに
体格の不利を自覚しているからこそ、彼なりの楽しみ方を見いだしている 【月刊バレーボール】
クビアクは身長192センチで、最高到達点は347センチ。世界レベルでは決して大柄ではなく、それらの数字はむしろ日本人に近い。それでも、攻守で卓越したセンスを発揮し、コート上で躍動する。その姿に、水町は心を奪われた。
「元々、全然知らなかったんです。外国人といえば、イゴール(・オムルチェン/豊田合成)選手くらい。あるとき、パナソニックと豊田合成の試合を見て、『この選手、めっちゃうまいやん……』って。一瞬でハートを持っていかれました(笑)。そこからは、どハマリです」
今年の黒鷲旗では対戦機会はなかったが、会場で距離が近くなる場面が訪れた。行くしかない、と意を決して片手を差し出す。大好きな存在と握手し、頭をなでられた。
「小学生くらいの気持ちに戻りました(笑)。フェイントもそうですし、バックアタックからセットしてトスを上げるのも、見ていて、ほんとうにおもしろい。見るだけで、ワクワクするものがありますよね。自分もそういった選手になりたいと思うんです」
今、クビアクに質問できるなら、何を聞いてみたいか? 水町にそう投げかけてみると、少し悩んでこう答えた。
「バレーボールのどんな時が楽しいか、を聞いてみたいです。うまくなるには、とかではなくて、あれほどのレベルの選手はどんな時が楽しいんだろうって」
コート上で見いだす楽しさは、今も確かに水町泰杜の胸の中にある。まだまだこれ以上に――。レベルアップを続ければ、そこにはまた違う世界が、彼の目の前に広がることだろう。
(坂口功将/月刊バレーボール)