連載:指導者として

【戸田和幸連載(4)】効果的プレーに必要なポジショニング チャレンジさせ、課題をフィードバック

戸田和幸

守備のレベルを上げられれば、攻撃のTRの質は上がる

Cチームを預かる責任者として選手達には常に「本当のこと」を伝えることにしています 【宇都宮徹壱】

 ここまでの話を読むと、守備の事は追い求めていないのかと突っ込まれてしまいそうですが。
 サッカーですから当然守備についても追い求めてきています。
 攻守において出来る限り正しいポジショニングを求め、その上での主体性を求めてきています。

 実際のところ、守備のレベルを上げる事が出来れば攻撃のTRの質は上がります。
 その逆も然りです。
 但し、今回僕はボールを持たないところからのチーム作りは選ばなかったので。

 ちょっと分かりにくいかもしれませんが、そもそものプレーモデルが「守備」から考えたものではなく、あくまでも「攻撃」から考えたものだったので、そのプレーモデルを実現する為に必要なものを最優先にTRに励んできたという事になります。

 サッカーだけでなくハンドボールやバスケットボールなどのスポーツでは、ボールを持っている事がそのまま守備をしている事になります。

 どこでどうボールを保持すれば、ゴールを目指す事と守備の両方を同時に行う事が出来るか、それを我々のチームはどういう形で実現出来るのか。

 日々考え追求してきていますが、結果にはまだ表れきっていません。

 表れきってはいませんが、少しずつ着実にそれが表現出来る時間は増えてきました。

 後は結果まで結び付けられるかの勝負となりますが、選手達の着実な成長を見る事が出来ているので我慢強く続けていこうと考えています。

選手達には常に「本当の事」を伝える

 話を戻します。

 プレシーズンを進めるにあたり、Cチームのチーム作りを進めていく為のベースとなるシステムは、4−4−2に決めて行い始めました。
 理由は大学サッカーでは非常にポピュラーなシステム(慶應も基本的には4−4−2をベースにしています)なので、選手達が慣れているであろうと考えました。
 加えてサッカーを教えていくにあたり、一番ベーシックなシステムだと僕自身が認識しているという事が挙げられます。

 実際は僕にとって4−3−3が一番好きなオーガナイズになるのですが、Cチームにはアンカーを務められる選手が当初はまだ見当たらなかったという理由もあり、採用はしませんでした。
 プレーする選手達が理解しやすいであろう形を用いながら指導を始めようという事で、4−4−2をベースにサッカーの基本から少しずつ指導を始めてきました。

 とはいえ、ベースが4−4−2だといっても、そのベースを基にどんなサッカーを展開するかで各ポジションに求められる選手は変わります。

 我々Cチームが追い求めるサッカーは、フィジカルベースでも個々の能力ベースでもなく。
「ポジショニングと判断」をベースにしたものなので、当然何をするにも「見て」「選び」「実行する」事を求めています。

 初めてオーガナイズやポジショニング、判断の優先順位といったものを与えられてサッカーをする選手が非常に多いので、当然ながら最初から順調に進むはずもなく。

 未だ道半ばというところではありますが、プレシーズンを通じてたくさんたくさんチャレンジさせ。
 課題をフィードバックしつつまたチャレンジさせ。
 強化を進めてきています。

 これは選手達には常々話をする事ですが、Iリーグにて結果を残していく為には、限られた数人の選手に依存するようなチーム作りは出来ないと伝えてきました。

 すなわちそれは我々のチームには突出した個は存在しないという裏返しになりますが、Cチームを預かる責任者として選手達には常に「本当の事」を伝える事にしています。

 もちろん選手達は皆それぞれ性格が違うので、伝え方について様々工夫はしてきていますが。
 彼らが本気で取り組んでくれているならきっと受け止めつつ、更に上達する為に努力してくれるだろうという考えで、出来る限り余計な言葉は足さず、はっきりと伝えてきています。

 僕の指導の下、日々真摯に一所懸命に取り組んできてくれている選手達は皆必死だと思います。

 次回はそんな学生たちとの関わり方にも言及しつつ、Iリーグに向けてと、Iリーグが開幕して以降の話をお届け出来ればと考えています。

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著者プロフィール

桐蔭学園高を卒業後、清水エスパルスに加入。2002年ワールドカップ日韓大会では守備的MFとして4試合にフル出場し、ベスト16進出に貢献。その後は国内の複数クラブ、イングランドの名門トッテナム、オランダのADOデンハーグなど海外でもプレー。13年限りで現役を引退。プロフェッショナルのカテゴリーで監督になる目標に向けて、18年からは慶應義塾大学ソッカー部のコーチに就任。また「解説者」というサッカーを「言語化」する仕事について、5月31日に洋泉社より初の著書『解説者の流儀』を出版

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